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VRで「技術の見える化」。地方製造業に革新を【長岡市IoT推進ラボ様インタビュー】

VRで「技術の見える化」。地方製造業に革新を【長岡市IoT推進ラボ様インタビュー】

こんにちは!リプロネクスト広報のたかはしです。
今回は「長岡市IoT推進ラボ」様のVR活用事例をご紹介させていただきます。

新潟県長岡市のものづくり産業におけるIoT推進に向けて旗を振っている「長岡市IoT推進ラボ」様。
重要課題の一つとして力を入れて取り組んでいる「技術の見える化」にて、VRの活用可能性を弊社にご相談いただき、技術継承VRコンテンツの企画・制作をしました。

このようなVRコンテンツ制作は弊社としても前例のない取り組みで、まさに試行錯誤しながらの制作となり、長岡市IoT推進ラボ様、株式会社大菱計器製作所様と何度も打ち合わせやテスト撮影・プロトタイプの制作を重ね、半年以上かけて1つのコンテンツに仕上がりました。

この記事では「長岡市IoT推進ラボ」メンバーである武藤さまと品田さまに、ご依頼の経緯や制作の背景、今後の展開についてお話を伺いました。

長岡市IoT推進ラボについて

長岡市IoT推進ラボロゴ

経済産業省が、地域におけるIoTプロジェクト創出のための取り組みとして支援している「地方版IoT推進ラボ」。

長岡市は2017年に選定され、現在は105の地域がそれぞれの地域課題に合わせたIoT推進活動を行っています。
日本海側有数の工業都市として知られる長岡市では、製造業にフォーカスし、労働人口の減少や若手人材不足などの課題をデジタルの力で解決すべく、IoTセミナー・人材教育・企業への個別相談などを実施。

2018年には「長岡IoTイノベーション・ハブ」を発足。ものづくりの現場課題について議論の結果、市内製造業全体の共通課題である「見積もり」「技術・技能の見える化」「日報のデータベース化」についてワーキンググループを設置し、課題解決に向けて取り組んでいます。

■長岡市IoT推進ラボ ホームページはこちら

「長岡IoTイノベーション・ハブ」設置の背景

–まず「長岡IoTイノベーション・ハブ」の設置に至るまでの背景を教えていただきたいです。

武藤さま

「長岡市IoT推進ラボ」を発足した当初、まずは製造業の皆さんのIT・IoTへの関心度を知りたいと思い、セミナーを開いたんです。
広い会場が埋まるほどに人は集まったのですが、「ちょっと話を聞きにきただけ」という方が多く、関心はあまり高くありませんでした。

でも製造業の人材不足は日々深刻化していて、人手不足の解消や生産性の向上にはITの力が不可欠なのは目に見えていて。
この形で活動を続けても地域のデジタル化は進まないし、産業が衰退してしまうと危機感を覚えましたね。

長岡IoT推進ラボ様セミナー写真
引用:長岡市IoT推進ラボ ホームページ

武藤さま

そこで、より深く入り込んでいく必要があると思い「長岡IoTイノベーション・ハブ」を設置しました。

行政・ものづくり企業・IT企業が集まり、まずは業界の課題を洗い出していったんです。ものづくりの現場から提供された課題を議論し、そこから見えてきた3つの共通課題「見積もり」「技術・技能の見える化」「日報のデータベース化」にまずは焦点を絞り、ワーキンググループを作りました。

–3つの共通課題の一つ「技術の見える化」に関して、今回弊社が一緒にプロジェクトを進めさせていただきました。具体的にどんな悩みが挙がっていたのでしょうか。

武藤さま

一つは教え手不足という課題です。熟練技術の伝承は、産業を発展させていく上で欠かせないのですが、せっかく若手が来てくれても、教える人がいない。逆に教育や研修に時間を割くと、業務に遅れが生じてしまう。こんな課題を持つ企業が多かったのです。
二つ目は、技術そのものが伝わりにくいということ。誇るべき技術があっても、その価値や意味を知ってもらわないと後継者は増えていきません。

そこで「技術の見える化」は業界の未来に直結する重要課題として、解決に向け取り組むことにしました。

「技術の見える化」には”体験”が必要。VRに注目

–「技術の見える化」にVRを活用することになった経緯を教えてください。

武藤さま

「技術の見える化」をどのように形にしようかと展示会等で情報取集をしていたのですが、ほとんどの事例が動画でのレクチャーでした。

しかし、グループで議論を重ねる中で「技術の見える化」に必要なのは、視聴ではなく、疑似体験ではないかと感じたのです。主体的に技術に触れることで、理解度も深まるのではないかと考えました。

武藤さま

そこから疑似体験=VRが浮かんだのですが、その当時に製造業と結びついている事例は安全教育くらいでした。でもVRは、技術継承のコンテンツにも活かせると感じていたので、どうしたら実現できるかを考えていて。

自分たちでカメラを購入してソフトを触ってみようかとも思ったのですが、ノウハウのないところでどうしようかと悩んでいたところ、リプロネクストの存在を教えてもらったのです。

「知ろう」という姿勢から、一緒に挑戦をしたいと思った

–リプロネクストの印象や、決め手についてお聞かせいただけますか。

武藤さま

打ち合わせの際、業界のことや技術について理解を深めようという姿勢が特に印象的でした。

私たちも、作って満足ではなく、ちゃんと活用されるコンテンツを望んでいたので、その姿勢から誠意を感じていました。何度も現場に足を運び、技術者へ取材をしながらコンテンツの提案をしてくれたので、前例のないプロジェクトという中でも安心感を持って進められました。

武藤さま

このプロジェクトは、事例完成後も実証実験を重ねて、課題解決に向けブラッシュアップしていきたいと考えていまして。長いお付き合いになるからこそ、取り組みに対する姿勢は大切だと思っていました。

また、これをノウハウにして業界全体の課題解決にも繋げていってほしいという期待もあったので、リプロネクストに依頼することに決めました。

大菱計器製作所様VR撮影風景

調整を重ね、VRコンテンツが完成。現場で活用も

完成した技術継承VRコンテンツは、精密測定機器の製造・販売を行う「株式会社 大菱計器製作所」様の、金属表面を削り取っていく仕上げの工程「きさげ」技術のもの。「きさげ」技術は機械による代替が困難で、人がスキルを習得するまでに相当な時間を要します。

そこで、習得期間の短縮や教育コストの削減を目的として、このVRコンテンツでは先輩の技術を隣で教わっているような疑似体験ができるのです。
実績紹介ページ:長岡市IoT推進ラボ 様【きさげ技術継承VR動画】
▼プレビュー版はこちら

–VRコンテンツ制作の中で印象に残ったことや、こだわって進めた部分を教えてください。

武藤さま

「きさげ」は、何度も現場に足を運んだ私たちでさえも理解するのが容易ではない技術です。
なので、技術に触れたことのない方に伝わるコンテンツになるかというのが一番の関心ごとでした。

リプロネクストさんの積極的な姿勢に応えるように、技術者の方々が今回の目的を理解し、撮影に協力してくださり、「ここにはコメントを入れた方がいい」「アングルはこの方が見えやすい」と的確なご意見をくださったので、初回としていいものができたと思います。

最終的には熟練の技術者の方から「これならば若い人も理解できるんじゃないか」と太鼓判を押してもらったのでよかったです。

–その後「株式会社 大菱計器製作所」様にて使用されての反響などは、いかがでしょうか。

武藤さま

入社年数の浅い技術者に、VRゴーグルを使って疑似体験をしてもらったと聞きました。
それまでは「現場で見て覚える」が中心だったところから、自分のタイミングで予習や復習ができるのは役に立っているようです。

また今後は、工場見学に来てもらった際に技術を疑似体験してもらえると嬉しいなと思っています。実際の見学では遠くからしか見られず「何をやっているかわからない」という課題があったので、技術の認知・PRとして活用してもらいたいですね。

vr-training1
提供:株式会社大菱計器製作所様

製造業のデジタル化で未来を拓く

–最後に、長岡市IoT推進ラボ様の今後の展望について教えてください!

武藤さま

繰り返しになってしまいますが、長岡市のものづくり人口は激減しています。
このままでは事業を継続することが困難な企業も増えていくでしょう。

その課題を解決に導くのが、デジタルの力です。まだまだ遅れているなとは思いますが、2018年の発足時と比べると雰囲気がポジティブに変わってきている実感はあります。生産管理をデジタル化して、実績を出している企業も出てきていますし。

私たちは事業者の皆さんに課題をより自分ごととして捉えてもらえるように、今回のVR事例のような「こんなこともできる」を伝え、今後も積極的に活動を続けていきたいと思います。

品田さま

私自身は今年度よりIoT推進ラボの担当になり、沢山の優れた技術を若い技術者の方々に伝えていく難しさを初めて知りました。
昔ながらの伝統技術とVRのような最新技術を融合させ、それぞれのメリットを活かしながら、未来を担う若手の皆さんに技術の価値を届けていきたいです!
長岡市IoT推進ラボ様インタビュー

武藤さま、品田さま、ありがとうございました!

この度、私たちの企業ビジョン「地域の課題を解決する」にも繋がるプロジェクトに携わらせていただけたこと、本当に嬉しく思っています。
前例のない取り組みであったにも関わらず、一緒に試行錯誤を重ねながらこうして技術継承VRコンテンツを形にすることができました。

ここからがスタートラインということで、私たちもより成果を追求していけるようVRの活用法を探っていきたいと思います。
今後も長岡市IoT推進ラボ様の取り組みを全力でサポートさせていただきます!

たかはし
たかはし
広報・メディア
2020年4月入社。大学卒業後にUターンし、地方誌編集、企業広報を経て現在に至る。人の心を動かし、寄り添える広報を目指し奮闘中。お酒と新潟と音楽が好き。