こんにちは!
ものづくりの技術には、機械による代替が困難で、しかも人が技術を習得するまでに相当な時間を要するものがあります。
そこで、行政・製造業様とともに、VR技術を用いることでその問題を解決するためのプロジェクトに取り組みました。
この記事では、技術習得・技術継承VRプロジェクトがどういったものなのか、そしてどんなものが完成したのかということについて、紹介していきたいと思います!
これまで、ものづくりの技術は、人から人へと代々受け継がれてきました。
ただ、人口減少の影響もあり、その担い手は減少。技術を伝えていくための時間や労力も課題となっていました。
そこで、先輩の加工技術をあたかも隣で見学しているような体験のできるVRコンテンツによって技術習得の効率化を図る目的で制作しました。
技術習得・技術継承VRを導入することによってどんな効果を得られるでしょうか?企業様・対象技術によってさまざまではありますが、ここでは代表的なものを2つ紹介していきます。
ものづくりの技術は、習得までに数年〜数十年かかるものもあります。担い手が不足している現代において、いち早く一人前になることが求められています。
VRによって技術を習得する期間を、1年でも1ヶ月でも早めることができれば、結果として売上や納品までのスピード、製品の精密さなどあらゆる面で効果が生まれてくるでしょう。
技術を継承し繋いでいく上で重要なのは、熟練技術者による新米技術者への教育です。熟練の技術者は自らの仕事の傍ら、新米技術者への指導を行う必要があるため非常に大変だと思います。
技術の一部だけでも、VRコンテンツで教育を代替できたらどうでしょうか。熟練技術者はこれまで指導に費やしていた時間を目の前のお客様の製品のために注ぐことができるようになります。より技術力の高い職人さんが、より製品の制作に取り組めるというのはとても大きなメリットです。
ここからは、VRがなぜ技術習得・技術継承に役立つのか、その理由を3つ紹介していきます。
VRコンテンツを使用した教育は、時間と場所を選びません。実際、工場の現場では指導担当者が忙しい時、新米技術者はわからない部分を聞きにくいという状況も発生します。
しかし、VRコンテンツは好きな時に好きな場所で、繰り返し何度でも体験することが可能。例えば、わからないところをVRコンテンツで確認したり、これから取り組む作業を事前に家で予習したりするなど、効率よく技術を学べます。
何かを教えてもらうとき、「それ、聞いていなかった…」「〇〇さんと〇〇さん、違うことを言っている。どうすればいいんだろう…」といった経験、みなさんありませんか?
特にものづくりの技術は、職人の感覚が命。何年も手を動かしてきて培った感覚が素晴らしい製品を生み出します。しかし、その「感覚」を言葉で伝えるのは非常に難しいこと。しかも、個人によって感覚は違うものがあります。
先輩の技術を隣で見ながら、大切なポイントをわかりやすく、漏れなく解説してもらえるという体験はVRだからこそ可能なんです。
人から人へと繋がれてきた技術は、「伝えること」に非常に大きな労力がかかっていました。例えば、新米技術者が3人いれば、3人に同じように指導しなければなりません。さらに翌年、新人が入社すれば、また同じように時間を使って指導をする必要があります。
VRを導入することによって毎年同じようなことを指導する時間は削減できます。
VRコンテンツは一度制作すれば何度も、何年でも使用可能。特に全員に理解してほしい基本的なことを効率よく伝えていく上で非常に有用なコンテンツです。
さて、ここからは技術習得・技術継承のためにどのようなプロセスで制作を進めてきたのかをご紹介していきます!
まずは、その技術についての理解を深めるところから始まります。実際に現地で見学やヒアリングを行いながら、そもそもどんな目的で何を作っていて、どんなふうに加工をしているのかを学びます。
また、これまでどのように技術を伝えてきたのか、どんな部分に技術継承のボトルネックがあるのかを探っていきます。
職人さんが何年もかけて習得してきた技術を、見学やヒアリングだけでは理解しきれないものもあります。
その技術を体験し、体感覚を伴いながら理解を深めていくことも非常に大切です。
※今回のプロジェクトでは技術の体験は行っていません。
技術の理解を深め、継承のボトルネックが見えてきたところで、プロトタイプ(試作)VRを作成します。
さまざまな高さや角度から360度カメラで撮影。どんな流れで、どんなテロップや効果を加えながら説明すると良いか試行錯誤を繰り返しながら制作を行います。
プロトタイプVRが完成したら、技術者の方に体験いただきます。
体験会を行い、その場でざっくばらんによりよくするための意見をもらっていきます。
「このシーンは〇〇の角度が大切だから、もう少し低い位置で見れると良い」「〇〇は人によって違うから、大まかな説明で良さそう」「ここはリズムが大切だから、作業音を入れたらどうか」など、技術者の方に体験してもらうことで見えてくる発見がたくさんあります。
プロトタイプを何度か制作し改良を重ね、方向性が固まってきたところで本制作を行います。
VRに2Dの動画や説明テロップ、ナレーションなどを加え、誰もがわかりやすいコンテンツを目指し制作。撮影から2週間〜1ヶ月を目処に完成したコンテンツをVRゴーグルで体験してもらい、満足のいくものが出来上がったらいよいよ納品です!
VRは「リアル」を大切にしたコンテンツ。機械での代替が不可能な、人の手でしかできない技術を継承していく上で、非常に親和性が高いです。
はるか昔から培われ、繋がれてきた伝統的な手仕事は本当に貴重で価値あるものだと思います。そんな技術を後世に繋いでいくということに、私たちが関わることができるのであれば、それはとても嬉しいことです。
今後も、貴重で魅力的な職人の手仕事を繋いでいくべく、技術習得・技術継承VRコンテンツを磨いていきます!