
リプロネクストは大阪府の河内長野市様よりご依頼いただき、オンライン上で市内の企業を360°見学できる『バーチャルカンパニーツアー』を制作。2023年2月より河内長野市ホームページにて公開されています。
弊社はこれまで製造業の工場を公開する『バーチャル工場見学ツアー』は制作していましたが、河内長野市様のように「業種は幅広く、地元企業の個性・魅力を伝えたい」という想いから生まれた『バーチャル“カンパニー”ツアー』は初めての制作でした。
この記事では、『バーチャルカンパニーツアー』の背景にある市内産業への想いや制作過程のこと、そして今後の活用について河内長野市役所 産業観光課の嘉悦様、栩野様にお話を伺いました。
目次
河内長野市内にある製造業・タクシー会社・工務店・農家・ショッピングセンター・福祉施設・美容室など全15社をオンライン上で見学できるコンテンツ。いずれの企業も事業所や工場の様子を360°見学することができ、コンテンツ内に埋め込まれた動画では従業員の生の声などを聞くことができます。
こちらは、河内長野市の産業の魅力向上を図るとともに、人材確保や販路拡大に繋げ、市内事業者の競争力強化や市内産業全体の活力向上を目指して企画されました。
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―今回制作させていただいた市内産業の魅力を伝える「バーチャルカンパニーツアー」ですが、河内長野市の取り組みとして”産業”をキーワードに発信を強化している理由を教えてください。
河内長野市は1970〜90年代にベッドタウンとして、爆発的に人口が増えました。
その最も人口が多かった頃、騒音などの点で子育て世代からあまり良く思われず、肩身の狭い思いをしていたのが、かねてより営まれていた市内産業。そこから30~40年近く経ち、当時の子育て世代が高齢化し、その子どもたちが就職等で市外へと流出しているのが現状の課題です。
河内長野市には地場で育まれてきた企業・産業が沢山あるのに、市民の皆様に魅力が伝わりきっておらず、「就活の際に選択肢がない」と思われてしまう状況を変えたいという想いから近年“産業”にスポットを当てて様々な施策を行っています。
―『バーチャルカンパニーツアー』の土台となる構想はどのように生まれたのでしょうか?
何かできないかと考えていた時に、デジタル技術の活用による地方の活性化を支援する「デジタル田園都市国家構想交付金」の存在を知って。これを活用しようとアイデアを出し合った結果、「VRゴーグルを使って場所・時間関係なく企業見学できたら、多くの方に見てもらえるんじゃないか」「若い世代にも興味を持ってもらえるんじゃないか」と意見がまとまり、申請後は無事に承認が下りました。
当初から、Googleストリートビューのような静止画で360°巡れるようなコンテンツをイメージしていたんですが、色んな企業に話を聞いてみるとやりたいこととできることのギャップが見えて、どういった形で実現しようかと悩んでいたんです。
そんな時にリプロネクストの河合さんが色々とアイデアをくださって、企画づくりを前に進められたので、心強い存在でしたね。
―『バーチャルカンパニーツアー』では、特にどんな魅力を伝えたいという想いでしたか?
河内長野市の産業の魅力は、古くからの製造業もあれば、比較的新しい生活関連サービスもあるジャンルの多様さだと思っています。なのでバーチャルツアーを通して働く現場を気軽に見てもらい、「河内長野市で働く選択肢の幅広さ」を伝えたいと感じていました。
360°のバーチャルツアーは工場見学のイメージが強いですが、そうした概念にはとらわれず、農家さんのトラックからの目線やタクシーの運転席からの視点など、色んなことにチャレンジしたいと思いました。
―今回15社のバーチャルツアー制作でしたが、制作プロセスで特に印象的だったことを教えてください。
私たちとしては、各企業様の個性・強みはしっかりと伝えつつも、コンテンツに差が出てほしくないという希望がありました。そこでプロポーザルの時点でリプロネクストが提案してくれたのが、『ポイント制(点数制)』です。一企業あたり30ポイントと決め、動画埋め込みは3ポイント消化、画像なら2ポイント消化とルールを設けることで、コンテンツ間のギャップを生まず、かつ各企業の訴求したい部分をアレンジできる仕組みができていました。
企業の方も検討の際のイメージがしやすく、参画の募集をする際もとても役立ったところです。
―バーチャルカンパニーツアーの撮影はいかがでしたか。
360°撮影に関しては、意外とこんなに早く終わるのか!と驚きでした。また、今回は360°撮影だけでなく、バーチャルツアー内に埋め込むインタビュー動画等も撮影していただいたんですが、とある企業さんの若手社員2名が自分の言葉で流暢に、会社の魅力や業務のやりがいを伝えていたことに感動しましたね。
初めて会った時はシャイな印象だったんですが、市のワークショップにも度々参加してくれていて、今やこんなに話せるようになったのかと、成長を垣間見れた瞬間でした。
こうした撮影は、関わる社員の皆さんが「自社をどんなふうに見せたいのか」と考えるいい機会になったのではないかと思います。
―関わる企業・事業者様が多い中、河内長野市様とリプロネクストの役割分担はどのようにしましたか?
事業者様の参画を募る説明会には河合さんにも参加いただき、具体的なイメージを伝えてもらいました。
私たちはそこから入り口を作り、参画企業を確定。その後の細かなやりとりは、リプロネクストが市と連携をしながら進めてくれました。各社への撮影前のヒアリングシートなどは全て共有してくださってたので、安心して任せられましたね。企業様のニーズを細かく把握してくれて、スピード感を持ってフィードバックしてもらえたのがよかったです。
参画企業を募るという部分は、苦戦した部分ではありましたが、完成したら満足していただく自信があったからこそ、説明会後も今回のプロジェクトの意義を個別にお伝えし、「この事業を通じて、市内産業を一緒に盛り上げていきましょう!」という熱を伝えました。
―そして完成した『バーチャルカンパニーツアー』。出来上がったコンテンツを見て、いかがでしたか?
初めて見た時は、純粋にテンションが上がりました! 部署内でもVRゴーグルの取り合いで(笑)
私たち自身、訪問したことのあるオフィス・工場もあれば、バーチャルカンパニーツアーで初めて見る事業所もあったので、新鮮な気持ちでしたね。
―参画企業様からの反響はいかがでしょうか?
各所から、活用の声が届いています。ある企業では海外営業の際に使っていて、オンラインで商品の説明をする際に役立てているようです。こちらは撮影の際、競合他社との兼ね合いから見せる範囲で悩まれていたのですが、最終的に調整して色々な商品を見せられるようになったことで提案の幅が広がったようです。
別の企業では、ホームページのトップにバーチャルツアーを埋め込んでいるので、表示回数もトップレベルで伸びています。これまで採用募集をしても応募が少なかったのに、本市のオープンカンパニー事業『ワークワクワク河内長野』や今回のバーチャルツアー含め、市との取り組みに参画してから3名応募、うち2名の採用につながったそうです。
こうして実際に作ったものを活用していただき、結果に表れていることが何よりも嬉しいですね。
―河内長野市様として、今後『バーチャルカンパニーツアー』をどのように活用していく予定ですか?
現在、市のホームページにて公開中ですが、今後は市が関わる就職説明会や観光イベント、展示会等のリアルイベントでも積極的に活用したいです。
▼2022年11月に開催されたイベント「ワークワクワク河内長野」にバーチャル会社見学ブースを設置
河内長野市独自のMaaS(Mobility as a Service)アプリ「モックルMaaS」の一コンテンツとしても発信しています。バーチャルツアーを見て「ここへ行く」ボタンを押すと企業までのルート案内が表示される仕組みになっているので、各企業への見学・誘致につながることを期待しています。
また、短期的に見ると大阪では2025年に大阪万博が控えています。ここでも何らかの形で『バーチャルカンパニーツアー』の取り組みを届けられないかと、思案しているところです。
長期的には、こうした取り組みの一つひとつが「河内長野市で働きたい」「河内長野市に拠点を置いておきたい」というポジティブな働きかけになることを願っています。知ってもらうための発信が自社の強みの再発見となり、企業の自力向上につながる。ひいては競争力が上がり、売上が上がり、市全体が活気に満ちていく。
そんな好循環を生み出すためにも、今はこの完成した『バーチャルカンパニーツアー』をしっかりと活用し、効果・価値を出してさらに広げていきたいです。
インタビューを通し、今最も目を向けるべきところに向き合い、一つひとつアクションを積み重ねることの大切さを教えていただきました。そして想いを伝播していくことで、地域の企業・人がつながってゆく。
何よりも嘉悦様、栩野様が常にワクワクした気持ちを持ち、各企業様と連携しながら魅力発信に尽力されている姿が印象的でした!
嘉悦様、栩野様、この度はインタビューにお答えいただき、ありがとうございました!
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