VR・メタバースで地域社会に開かれた高専づくりを【長岡高専様インタビュー】
「長岡高専」の略称で知られる長岡工業高等専門学校は、中学校卒業後に5年間の一貫教育を行う高等教育機関で、これまで多くの技術者・経営者・研究者を輩出しています。
世の中では今まさに、メタバースや5G/6Gといった高速通信環境など科学技術の進化が話題となり、日々情報がアップデートされていますが、長岡高専ではこうした科学技術の発展に適応できる、高度な知識と実践力を身につけた技術者養成を目指しています。
そんな中、長岡高専では2022年3月、実写VR動画で360°学校見学ができる「長岡高専VRキャンパスツアー」をYouTubeに公開。こちらはBSN新潟放送様(以下、BSN)との協業で、弊社も制作を担当しました。
また、2022年4月にはメタバース空間「長岡高専バーチャルキャンパス」も公開し、全国の高専で初の取り組みとして注目されています。
この記事では、長岡高専のVRやメタバース活用の背景やその想い、未来の学校づくりについてご紹介します。
「長岡高専VRキャンパスツアー」のVR動画内にて、ナビゲーターとして登場した電気電子システム工学科・准教授の和久井直樹先生にお話を聞きました!
「長岡高専VRキャンパスツアー」とは
▼▼動画の上でクリック&ドラッグすることで、バーチャル体験ができます▼▼
長岡高専の授業や研究の様子、学生の日常や寮生活の雰囲気を、現地で見学しているような気分で360°見渡せるVRコンテンツです。
先生たちによる学校案内では、教室や研究室の装置・機械を実際に触りながら、より具体的なイメージが伝わるよう動画を使って説明するシーンもあります。
現在、長岡高専公式YouTubeチャンネルで公開中です。
▶︎▶︎関連実績:長岡工業高等専門学校 様 【バーチャル・キャンパスツアー制作】
「みらいキャンパス」の構想から、VRやメタバースの実現へ
長岡高専さんのメタバースやVRの制作経緯について教えてください。
まず、今後の学校づくりのビジョンとして、リアルとサイバーを融合した「みらいキャンパス」の構想を立てていたんです。
というのも、令和2年はコロナ禍でほとんどがオンライン授業で、これまでと異なる形での学びとなりました。このことが従来の学び方について見つめ直す機会にもなり、黒板を見て受動的に学ぶスタイルではなく、リアルもオンラインも協働教育(※)を展開できる空間を構築しようという話になったんです。
(※)協働教育…学生同士、または学生と地域・企業が、コミュニケーション、プレゼンテーション、役割分担を行いながらグループ単位で課題解決を行う学習。思考力・判断力・表現力などを育成する。
そこでBSNさんと、オンラインの場づくりをメタバース空間で行うことになりました。
メタバースであれば、アバターを介して対面のようにディスカッションができる上、距離の問題が解消されることで、遠方の教授の講義を受けたり、海外の学生との交流も実現できます。
メタバースがまさに「みらいキャンパス」の実現にふさわしいプラットフォームだったわけですね。全国の高専を見てもメタバースを活用したバーチャルキャンパスは、初の事例のようですね。
▶︎▶︎「長岡高専バーチャルキャンパス」サイトはこちら
「長岡高専バーチャルキャンパス」は以下の4つのルームで構成されています。
・授業・講演を聞く「セミナールーム」
・学生同士でディスカッションする「グループワーク室」
・進路相談などができる「ミーティングルーム」
・学生同士が談話する「ラウンジ」
長岡高専の職員・学生だけでなく、全国高専の教職員・学生や、イベントによっては高専生以外の高校生・大学生や一般の方も利用できるそうです。
時期を近くして、リプロネクストが制作を担当した「長岡高専VRキャンパスツアー」も公開されました。こちらを制作したきっかけもぜひ教えてください。
コロナ禍でオープンキャンパスは規模を縮小し、代わりに動画で学校紹介をしたりしていたんですけど、なんだかリアリティーに欠けるなという印象がありました。
そこでBSNさんからVR動画のご提案をいただき、リプロネクストさんとも繋いでいただきました。
学生、そして地域と繋がるVRキャンパスツアー
完成した「長岡高専VRキャンパスツアー」を見終えた時、学校の空気感がありのままに伝わってきた印象でした。制作を進めていく中で、ここはこだわったというポイントはありましたか?
先生方との話し合いの中で、中学生に見てもらうだけでなく「地域の方々にも高専への理解を深めてもらいたい」と意見が出ました。高専は学びの場であると同時に学術的な、研究機関としての側面も持ち合わせています。なので、地域の方にとっても高専の全体像が見えるような構成を依頼しました。
新聞やニュースを見ていると長岡高専さんは企業や行政と連携して研究を進めていたりと、地域との繋がりが深い印象があります。実際の仕上がりはいかがでしたか?
ディレクターの河合さんのご提案があり、VRの強みを活かした遊び心のあるコンテンツになりましたね! VRは360°映るので、どんなに動きを付けても大丈夫。見てる人を飽きさせないためにも、視点を動かしてもらえるように工夫した撮影でした。
BGMもテンポが良く、日常の雰囲気をそのままに出せたことがよかったです!長岡高専の魅力の一つとして、先生と学生の距離の近さがあります。360°よく見ると奥の方で先生と学生が会話をしていたり、VRだからこそ「ありのままの長岡高専」を表現できたんじゃないかなと思います。
VR動画全体を通して、和久井先生の自然体な雰囲気がいいアクセントでした!
そして教室や研究室の紹介では、VR動画の中に動画を埋め込んで紹介していましたね。
技術的な部分は耳で得られる情報だけでは少ないので、動画を入れて具体的なイメージを足してもらいました。疑似体験だけじゃなくて、このように情報量も増やせるのか!と感動しました(笑)
VRキャンパスツアーは学校広報の入口に
「長岡高専VRキャンパスツアー」は今後どのように活用する予定ですか?
現在は公式YouTubeチャンネルのみで公開していますが、夏にかけて中学校で行う学校説明会や、本校でのオープンキャンパスなど実際に中学生の皆さんと会える機会が増えるので、チラシにVR動画の二次元バーコードを入れて配布を考えています。
オンラインのみの発信だけでなく、オフラインの媒体からも発信していただけてこちらも嬉しいです!
新潟県内の大学や専門学校で、Googleストリートビューや静止画タイプのバーチャルツアーを活用して学校紹介している事例は見かけたことがあったんですが、他とアプローチが違うところも気に入っています。
学校との接点、入り口に見てもらえたらと思いますね!
リアル×オンラインの融合で長岡高専らしさを追求
教育カリキュラムだけでなく、学校広報の面でも目的に沿った最新技術を導入し、検証されていることがインタビューを通して見えました。
最後になりますが、今後目指す学校のあり方を教えていただきたいです!
メタバース空間「長岡高専バーチャルキャンパス」は、どこにいても繋がれる学びの空間としてこれから展開をしていきます。完成したこの空間を維持して発展させていくことが大切なので、コミュニティとしての価値を高めていきたいです。
同時に、これまで通り地域に根ざした高専であることの価値もあります。
僕が学生として長岡高専に在籍していた10年前と比べると、県内就職を希望する学生が増えました。
その背景には、どこにいてもパソコン一つで働けるという環境や、地元にいても遠方の講師と話せるなど、距離や時間のハンデが無くなり、好きな場所で好きな仕事ができるようになったということが大きいと思います。
なので今後も地元企業や地域との連携を大切にしながらも、全国・海外と、外へと開けた長岡高専を作っていきたいですね。
学生の価値観が広がっていく学びの場として、一人ひとりの将来への大きなステップを作っていきたいです。
まとめ
インタビューを通じて、先生・職員の皆さんが新しい技術を面白がり、積極的に取り込んでいく文化が「長岡高専」の文化や強みに繋がっていると感じました。
地域という「内」と、全域という「外」。双方との深い繋がりを両立できるのが、VRやメタバースといった最新技術なのではないかと思います。
そういった新たな取り組みの中に携わらせていただけこと、本当に感謝します。
私たちも、教育分野の課題解決や発展に向けて、今後もサービスの可能性を広げていきます。
和久井先生、ありがとうございました!
たかはし
広報・メディア
2020年4月入社。大学卒業後にUターンし、地方誌編集、企業広報を経て現在に至る。人の心を動かし、寄り添える広報を目指し奮闘中。お酒と新潟と音楽が好き。