
ビジネスにおいて、企業の大切な出会いの場である「展示会」。これまでは対面で行うことが主流でしたが、2020年から猛威を奮い始めた新型コロナウイルス感染症の影響で状況は変わり、多くの展示会が中止・延期を余儀なくされました。
現在は緩和の動きとともに全国各地で開催されつつありますが「オンライン上で臨場感のある展示会を実施しよう」と、対面と併用してオンラインの情報発信を強化したのが、 新潟県三条市にある燕三条地場産業振興センターです。
空間を3DCGスキャンした360°バーチャルツアーを活用し、ユーザーの都合に合わせて好きな時間に見学できるバーチャル展示会を公開しています。
今回は、バーチャル展示会を行うに至った背景や対面展示会との使い分けのポイントなどを、燕三条地場産業振興センター産業振興部の刈谷さんにうかがいました。
目次
新潟県の燕市・三条市は、世界的に「金物の町」として知られており、金属製造業が盛んです。同センターは、こうした地場産業の人・技術・情報の高度な交流結合を目指し、燕三条地域の活性化の原点となる『モノづくり』を支援する拠点として、ビジネスマッチング・技術支援を行っています。
■燕三条地場産業振興センター 公式サイトはこちら
■「燕三条ものづくりVR展示館 in 関西M-Tech2022」はこちら
2022年10月5日(水)〜7日(金)にインテックス大阪(大阪府)にて開催された「第25回 関西 機械要素技術展」の会期に合わせ、バーチャル展示場にて出展企業6社の情報を公開。
スマホ・PC・タブレット等でWebブラウザからアクセス可能で、ユーザーは好きな方向を選び、展示物を目の前にしているような感覚で360°展示コーナーを見ることができます。
各ブースに設置されたボタンをクリックすることで、技術を動画で視聴することや直接企業に問い合わせができるなどの機能が付いています。
燕三条地場産業振興センター様では、2022年度より「バーチャル展示会」として対面の展示会と併用する形でオンラインの発信を始めたと聞きました。リプロネクストは、10月に行われた第二回目のコンテンツ制作を担当させていただきましたね。どのような流れから、この360°ビューのバーチャル展示会を行うに至ったのでしょうか?
新型コロナウイルス感染症の影響で、展示会のあり方が大きく変わったことが一番の理由です。私たちはそれまで、燕三条エリアの技術を全国にアピールし、新たなビジネスマッチングを生み出す場として企業様と一緒に展示会へ共同出展していました。
コロナ禍で展示会の中止や来場者の減少もあり、なんとか別のプロモーション施策を考えなければと思い、バーチャル展示会の活用に行き着きました。
数ある発信方法の中で、バーチャル展示会という手法を選んだ理由も気になります!
調べていく上で、GoogleストリートビューやVR動画など、オンライン上で展示会を表現するにも色々ありそうだなと見えてきました。その中の一つが今回のMatterport(※)を使ったバーチャル展示会でしたね。「オンライン上で訪問してくださる方に、どういった体験を届けたいか」に焦点を当てた時、Matterportを使った展示会が理想的だなと思ったのです。
(※)Matterportとは…空間を専用カメラで360°スキャンすることで、バーチャル空間・3Dモデルを作成できるプラットフォーム。詳しくは弊社が運営するメディア「VRtips」のこちらの記事をご覧ください。
届けたいものは何かというところと、機能面を照らし合わせて最適解を見つけたということですね。
Matterportは、Googleストリートビューのようにオンライン上で360°巡る体験を届けつつ、タグを使って動画やサイトリンクを埋め込めるので、情報を集約できるのが魅力でした。重ねて、動画は受動的なものになってしまうと感じたので、見る方の意思で好きなところを選べる点で展示会らしさを表現できると思いましたね。
いざMatterportでバーチャルツアーを作る際に、こだわった部分はありましたか?
展示物に微細な金属加工が施されているものが多いので、歪みや映り込みが少し心配でした。Matterportでそういった事例があまりなかったので、事前にサンプル品をお渡しし、テストを行っていただきました。
バーチャル展示会を公開してからの反響はいかがでしたか?
現地開催に合わせてバーチャル展示会を公開していたので、会期中や会期後に見てもらうことを予測していたのですが、「事前の情報収集」というニーズが多かったことに驚きました。これまでは会場で情報収集をする方が多かったので、オンラインでは異なるアプローチにも繋がるのだと、発見がありましたね。
バーチャル展示会の事前周知はどのように行ったのでしょう?
紙媒体やメルマガを通して発信し、そこから事前にチェックしていただけたようです。
紙媒体では二次元バーコードを掲載してWebへと誘導する形です。以前までの事前情報は、出展企業名と概要しか掲載していなかったので、情報の濃度が上がったと感じますね。
今後もバーチャル展示会を活用していきたいですか?
そうですね。これまでは展示会の会期に合わせて公開していましたが、次回は期間を延ばして通年で発信したいと思っています。バーチャル展示会ってどんなものだろう?と燕三条エリアの企業様にも興味を持ってもらいたいですし。
私たちも驚いたのが、バーチャル展示会は意外と敷居低く始められるということです。
ホームページを持っていない企業様も多いので、Web施策の入り口として検討いただくのも良いと思っています。
燕三条エリアのモノづくり技術は、海外からも注目を集めているからこそ、オンラインでの情報発信が今後の市場開拓のカギとなりそうですね。
ブランド価値が周知されつつある今だからこそ、バーチャル展示会を上手く活用して企業と企業のマッチングの可能性をさらに追求し、入口を広げていきたいと思います!
最後に刈谷様からは「展示会におけるオンラインの良さ、オフラインの良さ。両軸をうまく回してさらなる受注促進に繋げたい」というお話がありました。
どちらかで完結させるのではなく、うまく組み合わせることで相乗効果が生まれてゆく。
マーケティングにおける、非常に大切なことを私自身改めて再認識させていただく機会になりました。
刈谷さん、インタビューにご協力いただきありがとうございました!