ネット環境の向上や、Web会議システムの高品質化、さらには2020年春における新型コロナウイルスの流行などに伴い、イベントにおいてもリアルからオンラインへの移行が加速しています。
オンラインイベントには、「会場費・交通費が掛からない」「遠方からでも手軽に参加が可能」などといったメリットがありますが、実際にやってみると難しい部分も、かなりあります。
また、イベントがオンライン化することで、集客の対象が全国各地となります。裏を返せば、全国各地のイベントと比較・検討したうえで参加者は参加の意思決定をすることになります。
オンラインイベントではリアルなイベントよりも、他のイベントとの差別化や、高品質化に気を配らなければなりません。そこで今回は、質の高いオンラインイベントのやり方について皆さんに共有していきたいと思います。これまで幾度となくオンラインでのイベントやリアルとオンラインを組み合わせたイベントを行う中で学んだポイントを綴っていくので、ぜひ参考にしてみてください。
質の高いオンラインイベントとは、どんなイベントでしょうか。
私は、「リアルタイム & そこに集う人たちだからこその価値を生み出すことができる場」だと考えています。
いま、配信型のコンテンツが溢れかえっています。これまでは、インプットを行うのであれば、本や論文といった書籍などが情報源でした。書籍では、最新の情報が私たちの手元に届くまでに時間が掛かってしまいます。そういった時代においては最新情報を受け取ることのできる「イベント」はかなり有効なインプットの方法の一つでした。
しかしながら、現在はYouTubeなど、配信型コンテンツが溢れています。無料で、最新の情報が簡単に手に入るんです。そういった環境においては、ただ情報を得ることのできるだけのイベントは、イベントである意味がありません。それこそ、そういったイベントを行うのであれば、場所を選ばず、好きな時間に視聴することができる「配信型」にするほうが良いでしょう。
つまり、配信型では実現できない、「リアルタイム」&「人が集う」からこその価値を提供できるイベントが「質の高いオンラインイベント」なのかなと考えます。
この記事で取り扱う「質の高いオンラインイベント」という言葉の意味についてみなさんに共有しました。いよいよ具体的な話にはいっていきます。
まずは、リアルな場との違いを整理してみましょう。
オンラインイベントでは、主催者側が参加者に個別でコミュニケーションをとることができません。コミュニケーションは基本的に「1 対 多」という構図になってしまいます。
主催者と参加者との距離感を近づけるのは、オンラインイベントの方が難しいと言えます。
オンラインイベントは、好きな場所から気軽に参加できるので、参加のハードルがかなり低いです。例えば、参加費の安いイベントであれば特になのですが、リアルなイベントに比べて当日の連絡無しキャンセルが多発します。
手軽に参加できるからこそ、参加者のモチベーションは人によって様々。その差が、オンラインイベントの運営を難しくしている要因にもなり得ます。
どのWeb会議サービスを活用するかによっても違いますが、多くのオンラインイベントで活用されている「ZOOM」を例にすると、主催者側でグループを分け、時間を区切った交流の部屋「ブレイクアウトセッション」という機能があります。
「ブレイクアウトセッション」は、決められた枠組みの中での交流となり、リアルな場のように参加者が流動的に動けません。したがって、参加者同士の交流についても、ある程度デザインしておく必要があります。
「リアル」&「人が集う」からこその価値を生み出すことのできる、「質の高いオンラインイベント」にはどんなポイントがあるでしょうか。その進行や、場づくりのポイントを共有します。
■プログラムのデザイン
土台となるのが、プログラムのデザインです。会の目的に照らし合わせ、参加者がどんな状態となることを目指すのかということを考え抜いてプログラムをデザインしていくことが重要かなと思います。
どのアクティビティを、いつ、どのくらいやるのかということに対して、すべてに意図を持ってプログラムをつくります。
また、オンラインイベントでは予期せぬことがより起こりやすいです。例えば、「接続できない」などの対応に追われてしまい、時間が押すことも…。そういったことも想定して、余裕のある時間配分を心がける必要があります。
さらに、オンラインイベントにおいて最も大切だと感じるのが、参加者の主体性を引き出すプログラム構成にすること。前述したとおり、オンラインイベントは参加者の姿勢やモチベーションに差が出やすいです。
イベント中、参加者が「思わず自らアクションをしたくなる」「この時間、みんながより良い時間を過ごすにはどうすれば良いかということを考える」ような仕掛けをプログラムデザインを行う上で考えていくとが大切かなと思います。
■広報のデザイン
続いては、広報のデザイン。オンラインイベントでは、全国どこからでも参加が可能なので、参加してほしい対象を明確にしたうえで広報する必要があります。
「どんな人にどんな時間を過ごしてほしいのか」そこを明確にしてイベントを発信することで、当日参加者の主体的な参加 ・ 創発が起こる対話の実現がかなりしやすくなると思います。オンラインのイベントでは、広報の仕方でも当日の雰囲気が変わってくるのでより広報に気を配る必要がありますね。
参加人数の多さよりも、当日の場の質にこだわりたい場合は、事前課題を用意するなど参加のハードルを意図的に高くするということも方法のひとつです。
■交流のデザイン
参加者同士の交流をどのようにするかということは、オンラインイベントにおける一番の悩みの種ではないでしょうか。
自由な交流会にするのであれば、参加者がルームを移動できるような仕組みを考えたり、交流会の流れの例を事前に提示したり、グループの中でファシリテーターを一人決めたり…。
ある程度イベント全体のテーマが参加者も含む全員で共有できているのであれば、事前に対話のテーマを決めておいたり、参加者ひとりひとりが問いを出し、その問いに対して対話したり…。
オンラインだからこそ、交流の場のデザインをじっくりと考えておく必要があります。
■参加者の主体性を引き出す声掛け
「プログラムをデザインする」の部分でも述べましたが、参加者の主体性を引き出すということは質の高いオンラインイベントにするうえで必要不可欠です。
イベントの進行役・ファシリテーターの声掛け一つでも主体性を引き出すことは可能です。
たとえば、「このイベントをつくるのは、ここにいる全員です。ぜひ、ご要望があれば教えてください。」など、自分たちでよい時間をつくっていくという意識になってもらえるような声掛け・促しができると良いと思います。
■自分らしさを出す
また、オンラインイベントだからこその手触り感・あたたかさを大切にする必要があります。リアルタイム・参加者同士の交わりだからこその価値をより高めるには、参加者がリラックスした状態でその時間に没頭してもらうことが大切。
そんな状態となることを促すためには、まずは、進行役・ファシリテーターから自分を開示し、自分らしい進行をしていくと良さそうです。
■プログラムを柔軟に変更する
こちらに関しても上述しましたが、オンラインイベントでは予期せぬことが起こりやすく、時間も読みにくいです。なので、決してプログラム通りにきちっと進行しようと思わず、プログラムを柔軟に変更することのできる準備が必要です。
例えば、休憩時間を長めに取っておくとか、「この時間が押したら、こうしよう」という想定をしておくとか…。臨機応変に、柔軟に対応できるような全体のプログラム作り、想定の準備が大切です。
■フリータイムを設ける
オンラインイベントでは、主催者や講師・ゲストとのコミュニケーションが取れる時間を参加者になかなか提供できません。なので、イベント終了後も部屋を空けておき自由にコミュニケーションをとることのできる場を用意することも大切。
参加者の中には、主催者・講師・ゲストに関心があって参加をするという方も多くいると思います。オンラインイベントであまり話せなかった…という体験で終わらせてはもったいないです。
もし、フリータイムに残っている人が多ければ数分のブレイクアウトセッションを行っても良いかもしれません。フリーで交流できる時間を入れることはオンラインイベントを運営する上でマストかなと思います。
■参加者のイベントに関する発信を促す
オンラインでは、イベントで感じたことや学んだこと、感想をその場で共有することができません。一日のイベントを振り返るという意味でも、参加者へイベントに関する発信を促すことも大切かなと思います。
例えば、Twitterにて#(ハッシュタグ)を付けて発信してもらうというのも効果的かなと思います。
イベントを終えたことで満足するのではなく、イベントをどう次につなげていくかということもイベントのデザインとして大切な部分ですね。
いかがだったでしょうか。
「オンラインが流行っているから」「オンラインにせざるを得ないから」だけでは、質の高いオンラインイベントを作り上げることはできません。
場づくりには正解がないので、まずは小さなイベントを実験的に行ってみて、改善を繰り返していくことが良いオンラインの場づくりの近道なのかなとも思います。上記、ポイントを示してみましたが、こんな部分を少し意識して実験してみてもらえたら嬉しいです。