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“知ってもらう”ための刑務所バーチャルツアー。再犯防止施策の広報活動に活用【法務省矯正局様インタビュー】

“知ってもらう”ための刑務所バーチャルツアー。再犯防止施策の広報活動に活用【法務省矯正局様インタビュー】

リプロネクストは法務省矯正局様よりご依頼いただき、オンライン上で刑務所の中を360°見学できる「刑務所バーチャルツアー」を制作しました。


「刑務所」と聞いて多くの方がイメージするのはニュースやドラマなどで見た映像で、受刑者が生活する施設内を見学したことのある方は少ないのではないでしょうか。

実際、今回のようにオンライン上で360°所内を見渡せるコンテンツを公開するのは、法務省矯正局様として初の事例。その背景には、国の施設としての刑務所の取り組みを一人でも多くの国民の方々に知ってほしいという想いがあります。


この記事では、「刑務所バーチャルツアー」について、制作に至る背景やコンテンツを通して伝えたいこと、今後の活用方法について法務省矯正局の深町様にお話を伺いました。

「刑務所バーチャルツアー」とは

刑務所バーチャルツアー イメージ

刑務所内を歩いているような感覚で360°見学できるオンライン上の体験型コンテンツ。パソコン・スマートフォンなどから、アプリ不要で体験できます。


面会室・単独室・自動車工場などの施設内の計16カ所をイラストの刑務官が写真や文章で紹介。普段は中々知ることができない刑務所内の食事の様子、医療体制、社会復帰に向けた教育活動や職業訓練の様子を学び、最後にはクイズ形式で理解を深めることができます。

■法務省「〜再犯防止施策を学ぼう〜刑務所バーチャルツアー」ページはこちら https://lipronext.sakura.ne.jp/moj/

オンラインの広報活動を強化。多くの方に届くパソコン・スマホでアクセスできるバーチャルツアーに

―これまでの課題についてお伺いさせてください。

刑務所は国の施設なので、国民の皆様に私たちの取り組みについてご理解いただくことは広報活動の中でも重要事項の一つです。

これまでも見学をお申し込みいただいた関係機関や大学などの受け入れや、「矯正展」という催しを通して一般参観を行なっていたのですが、新型コロナウイルス感染症の影響で対面での案内が困難になってしまいまして。
そんな状況下での発信方法を考えたところ、「オンラインを活用しよう」という結論に至ったのです。
これまでも法務省のYouTubeアカウントで動画は公開していたのですが、360°バーチャルツアーという形で受刑者のいる刑務所を公開したのは初めてです。

―オンラインでの発信方法が様々ある中、最終的に360°バーチャルツアーに決めた理由もお聞かせください。

動画などの案もあったのですが、リプロネクストから話を聞いて360°バーチャルツアーを体験させてもらったところ、これならオンライン上で現地を見学しているような体験をしてもらえると感じました。

VRゴーグルを使った本格的なVR体験もよかったのですが、今回は「一人でも多くの国民の方々に知っていただきたい」というテーマがあったので、パソコンやスマートフォンで体験できるコンテンツを作っていただくことにしました。

写真・文章でコンテンツに厚みを。バーチャルツアー体験後のクイズで学びを定着

―「刑務所バーチャルツアー」の制作において、印象的だったことはありますか。

バーチャルツアー内で登場する刑務官やマップのイラストのタッチが今回のコンテンツのテーマと合っていてとてもよかったです。幅広い世代の方に見てもらいたかったので明るく、そして砕けすぎていない雰囲気がまさに望んでいたものでした。

撮影では、私たちと刑務所の担当者、リプロネクストのスタッフの皆さんで事前に下見をし、撮影場所を決めていきました。

―私自身、「刑務所内を360°見せることにタブーはないのか?」と思ってしまったのですが、その点は問題なかったのですか。

刑務所という施設の性質上、掲載できない場所はありますが配慮しながら撮影を進めれば問題はありません。ただ、今回は建物の様子だけを見て回っていただきたいのではなく、各空間での取り組みや役割を知ってもらいたかったので、文章や写真で補足説明をすることを大切にしました。

受刑者が実習を行う工場などは、実際の活動場面を360°カメラで撮影するとプライバシーの理由でモザイクだらけになってしまうので、無人の空間を撮影し、後から埋め込んだ写真で説明するといった形をとっています。

―「刑務所バーチャルツアー」完成後の率直なご感想も教えていただきたいです。

イラストや装飾等を効果的に使い、伝えたいイメージを形にしていただけてよかったです。刑務所の様子が視覚的にわかりやすいので、小学生のお子様にもご理解いただけると思います。

また、バーチャルツアーの最後にクイズを入れるというのは嬉しいご提案でした。バーチャルツアーを通して知ったことを振り返っていただきたかったので、そうした機会になればと思います。

さらにアップデートするなら、効果音やBGMをつけたいです。そうすることで全体にさらに統一感が出て、体験する方を引き込むコンテンツになると思いました。

知ってもらう一歩に繋がるコンテンツへ。採用広報にも役立てたい

―「刑務所バーチャルツアー」の反響についてお聞かせください。

「高齢受刑者に向けた取り組みの実態を初めて知った」「刑務所は閉ざされているイメージがあったから、貴重なコンテンツだと思う」などの感想をいただきました。

また、同じ矯正局のスタッフからは「明るいイメージに仕上がっていてわかりやすい」といった声も上がり、各所から評判をいただいています。

―最後に、今後どのように活用されていくかを教えてください。

ホームページ上の公開だけでなく、対面型のイベントでもモニターに映して見ていただくことを想定しています。

また、採用広報向けとして、バーチャルツアーをきっかけに刑務官の仕事や矯正局の取り組みを知っていただけたら、と。例えば、警察官の仕事は小さいお子様も含めてよく知られていますが、刑務官はあまり知られていません。社会に役立つ仕事として覚えていただき、将来の選択肢の一つになってくれたら嬉しいです。

リプロネクストからいただいたバーチャルツアーのデモ動画には自分たちでナレーションを入れ、採用説明会などで活用予定です。



最後になりますが、受刑者の大半は刑務所から社会に出て新たな生活を始めます。私たちの生活に無関係ではないからこそ、この「刑務所バーチャルツアー」を通じ、再犯防止施策の取り組みについて少しでもご理解いただければ幸いです。

取材を終えて

インタビュー内のバーチャルツアーを体験した方のコメントにもあったように、私自身にも刑務所は閉ざされたイメージがありました。実際のところはそうではなく、むしろ「再犯防止の取り組みを知ってほしい」と様々な広報活動がなされています。

今回のバーチャルツアーは刑務所初の取り組みとしてもインパクトが大きいですが、社会性のあるVRコンテンツとして、広く多くの方に届くことを願っています。


深町様、インタビューにお答えいただきありがとうございました!

たかはし
たかはし
広報・メディア
2020年4月入社。大学卒業後にUターンし、地方誌編集、企業広報を経て現在に至る。人の心を動かし、寄り添える広報を目指し奮闘中。お酒と新潟と音楽が好き。