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メタバース制作会社の選び方|自治体・企業における活用シーンと導入視点

メタバース制作会社の選び方|自治体・企業における活用シーンと導入視点

メタバース制作会社を検討する自治体・企業が増えています。一方で、「どの会社を選べばよいのか」「導入して本当に活用できるのか」「単なる話題先行にならないか」といった不安も少なくありません。

重要なのは、メタバースという技術そのものではなく、自組織が抱えている構造課題を正しく整理することです。メタバースは、対面や物理会場に依存してきた施策を、空間構造から再設計するための手段です。課題が曖昧なまま導入すると、空間は完成しても活用されないという状況になりやすくなります。

本記事では、まず自治体と企業それぞれの構造課題を整理し、そのうえでメタバースがどのような場面で有効なのかを示します。さらに、メタバースは万能ではないという前提も含め、制作会社選定の判断軸を明確にします。

1. メタバース制作会社とは何か

メタバース制作会社とは、仮想空間を構築・設計し、自治体や企業の施策に組み込む支援を行う企業を指します。

しかし一言で「制作会社」といっても、その役割は大きく異なります。イベント運営を軸に空間を制作する企業、独自の3Dエンジンを開発する企業、既存プラットフォームを活用して空間構築を行う企業、課題整理から設計までを担うコンサルティング型の企業など、立ち位置はさまざまです。

そのため、「メタバース制作会社を探している」という状態のまま比較を始めると、自社の目的に合わない企業を選んでしまう可能性があります。

まず重要なのは、自組織がなぜメタバース制作会社を必要としているのかを整理することです。その背景には、既存施策の構造的な制約があり、メタバースという選択肢が浮上してきています。

2. 自治体施策における構造課題

2-1. 対面開催に依存する雇用施策

自治体主催の合同企業説明会は、対面開催を前提とするケースが多く、会場規模や日程によって参加者数が制限されやすい構造があります。一過性の開催に留まりやすく、域内企業と求職者の接点を継続的に設計することが難しい状況があります。

また、来場者が一部企業に集中する傾向があり、地域全体としての産業理解が十分に広がりにくいという課題もあります。開催後に情報が残りにくく、企業情報が資産として蓄積されにくい点も構造的な問題です。

2-2. 商談会・交流イベントの単発構造

商談会や交流イベントも対面開催を前提とすることが多く、会場や日程の制約により参加者が限定されやすい傾向があります。短時間の開催では十分な対話や関係構築に至らないケースもあり、単発施策として終わりやすい構造があります。

産業・教育・地域を横断した継続的な交流基盤を構築しにくく、施策が積み上がらないという課題も見られます。

2-3. 相談窓口における接点制約

行政や福祉分野の相談窓口は、対面や電話を中心とした運用が多く、開所時間や物理的距離により相談機会が制限されやすい状況があります。相談の入口が分かりにくく、必要な支援に到達できない層が生じる可能性もあります。

相談対応が特定部署や担当者に集中しやすく、継続的な伴走設計が難しいという課題も存在します。

2-4. 観光・地域資源活用の分断

観光分野では、自然・文化資源の多くが現地来訪を前提とした活用構造にあります。天候や季節、保全上の制約によって常時公開が難しいケースも多く、保存と活用が分断されやすい状況があります。

また、観光・教育・防災といった分野横断的な活用設計が十分に行われず、情報が分断されやすい点も課題です。

これらに共通するのは、「物理空間依存」「期間限定」「情報の分断」という構造です。

3. 企業施策における構造課題

3-1. 展示会の期間依存構造

企業展示会はリアル会場での期間開催が前提となることが多く、開催終了後に接点が途切れやすい構造があります。展示コンテンツが資産化されにくく、来場者の行動データを継続的に活用する設計が難しい場合があります。

会場規模や立地条件によって来場者数が左右されやすい点も課題です。

3-2. ショールームの物理依存

展示ルームやショールームは物理的空間に依存するため、来訪可能な層が地理的・時間的制約を受けやすい構造があります。展示内容の説明が担当者の力量に依存しやすく、情報の標準化が難しいケースもあります。

また、改装や展示変更により過去コンテンツが残らず、情報資産が蓄積されにくいという課題もあります。

3-3. 採用・ブランディングの接触断片化

採用活動やブランディング施策では、短時間の接触で企業理解を促す必要があります。しかし、説明会やイベントが単発型の場合、理解が断片的になりやすい傾向があります。

継続的な接点設計が難しく、施策が積み上がらない構造が見られます。

企業領域でも、「期間限定」「物理依存」「資産化不足」という共通課題が存在します。

4. なぜメタバースという選択肢が検討されるのか

物理的移動や対面参加に制約がある状況において、参加ハードルを下げながら対話性や回遊性を伴う接点を設計したい場合、メタバースは場所や時間に依存しない共有空間を構築できる手段として有効である。ただし、目的設計や運用設計が整理されていない場合、十分な効果は得られにくい。

メタバースは、オンライン配信の延長ではありません。空間構造を持つ接点を設計できる点が特徴です。

一方で、実地体験や現場確認が不可欠な施策を完全に代替するものではありません。リアル施策との併用や目的整理が前提となります。メタバースは万能ではなく、適切な設計があって初めて効果を発揮します。

5.メタバースが有効となる具体的シーン

自治体・企業の構造課題に対して、メタバースはどのような場面で有効に機能するのでしょうか。ここでは、実際の導入事例や活用パターンを踏まえながら整理します。

5-1. 単発イベントを常設基盤に転換したい場合

・出典:新潟市|「METAVERSE CAREER EXPO IN NIIGATA 2025」合同企業説明会

合同企業説明会や展示会は、開催日が終了すると接点が途切れてしまうという構造があります。メタバース空間として常設化することで、開催後も企業情報やコンテンツを閲覧できる状態を維持し、継続的な接点に転換できます。

メタバース空間をハブにすることで、ブラウザベースの仕組みによる閲覧状況の可視化やチャットログの取得が可能です。Webサイトに近い形でアクセス傾向を把握できるため、施策の振り返りや改善設計に活用できます。

5-2. 地理的制約を受けずに参加機会を拡張したい場合

【メタバース×地域産業】メタバース就業相談会「いわてで見つけるキミの仕事 inメタバース」 実施レポート(農業編/漁業編/林業編)
・出典:岩手県|「いわてで見つけるキミの仕事 inメタバース」

遠方や移動が困難な人にとって、リアルな会場参加は大きなハードルです。メタバースは物理的制約を受けずに参加できるため、地域内外の参加機会を大きく拡張します。

例えば、合同企業説明会や移住・UIターンイベントを仮想空間で実施することで、気軽に企業ブースを訪問したり、自治体情報を閲覧したりできます。

自治体がメタバースを導入して地域課題に取り組んでいる先進事例はこちらの記事をご覧ください。

5-3. 回遊性や偶発的接点を設計したい場合

Webページや動画配信では実現しにくい「回遊」や「偶発的な出会い」を設計したい場合、空間型接点は有効です。来訪者が自ら空間内を移動し、複数の展示を体験したり、他の来訪者と対話したりすることで、より豊かな交流が生まれます。

こうした回遊体験を設計したイベント系の事例として、大阪府河内長野市による「メタバース空間での記念式典」や、岩手県の「食の商談会&交流会」などが挙げられます。

5-4. 説明内容を標準化し、情報資産を蓄積したい場合

日亜鋼業株式会社 様【メタバースによるテーマパーク開設】
・出典:日亜鋼業株式会社|メタバースによるテーマパーク「NICHIA METAVERSE WIRE WORLD」

ショールームや展示空間では、担当者の力量に依存する説明が課題になることがあります。メタバース空間では、説明コンテンツやサンプル展示を標準化して組み込むことで、情報の質を均質化できます。

また、コンテンツは更新・蓄積が可能なので、過去の展示や資料を資産として保持しやすいという特徴があります。

5-5. 相談・交流における心理的ハードルを下げたい場合

山梨県甲府市様_ひきこもり支援メタバース_アイキャッチ
・出典:山梨県甲府市|全国初!メタバースを活用したひきこもり相談窓口

対面相談や窓口参加には心理的なハードルが付きまとうことがあります。アバターを介した参加は、顔出しや直接の対面が不要となるため、参加の敷居を大きく下げることができます。これは特に行政相談や若年層・ハンディキャップのある層向け施策で効果が高いです。

自治体でメタバースを活用し、相談窓口や交流スペースとして展開している事例はこちらで記事整理されています。

5-6. 教育・学習・研修で体験型学習を促進したい場合

新潟工科大学|メタバースオープンキャンパス
・出典:新潟工科大学|メタバースオープンキャンパス

メタバースは、実社会では難しい体験や状況を3D空間で再現できるため、教育や研修の設計にも活用できます。学校教育や企業研修・体験学習では、参加者の主体性を高める設計が可能です。

例えば、新潟工科大学のオープンキャンパス事例や、鹿児島大学教育学部附属小学校での体験型学習などが紹介されています。

メタバースは、物理依存や単発構造を補完する有効な選択肢ですが、すべての施策を置き換える万能な手段ではありません。導入の際は、目的設計と運用設計を明確にしたうえで活用することが重要です。

6. メタバース制作会社の代表例とタイプの違い

メタバース制作会社と一言で言っても、その役割や強みはさまざまです。単なる空間制作だけでなく、イベント企画やプラットフォーム運営、企業連携まで含めた設計支援を行う企業もあります。ここでは、公式発表や公開された実績をもとに、複数のタイプを紹介します。

6-1. イベント企画・運営型

イベント系のメタバース企画・運営を得意とする企業としては、株式会社HIKKYが代表格です。HIKKYは「バーチャルマーケット(Vket)」を主催しており、世界最大級のメタバースイベントとして多くの企業・団体が出展しています。たとえば、2025年冬に開催された『バーチャルマーケット2025 Winter』では、仮想世界上に複数会場を展開し、企業出展や没入型体験を実現しました。メタバース上で700以上の出展ワールドが展開され、世界中から100万人以上の来場者を集めたというレポートも発表されています。

このタイプは、短期間で話題性のあるイベントや展示機会をつくりたい場合に適しています。

・出典:PR TIMES

6-2. プラットフォーム活用型

・出典:cluster

既存のプラットフォームを活用し、メタバース空間を制作・運営する企業もあります。たとえばcluster株式会社のように、専用基盤を提供しつつ企業向けの空間設計を支援する事例があり、イベントスペースやプロモーション空間として多様な活用が進んでいます。

こうした企業は、特定のプラットフォーム上で 導入のスピード感参加のしやすさ を重視するケースに適しています。

6-3. 課題解決・企画設計型

Roomiq(ルーミック)法人向けサイト|ブラウザ型メタバースプラットフォーム
・Roomiq 法人サイト

自治体や企業が抱える構造的な課題(単発イベント・物理空間依存・情報断片化など)を整理し、その前提に合わせて空間設計から運用設計まで行う制作会社もあります。こうした企業は、単なる3D制作だけではなく、目的設計から伴走支援を行う点が特徴です。

たとえば、株式会社リプロネクストは、ブラウザベースで利用可能なメタバースプラットフォーム「Roomiq」を活用し、自治体主催の合同企業説明会の常設化や大学オープンキャンパスのバーチャル化、企業展示会のオンライン拡張などを支援しています。

単発イベントとして終わらせるのではなく、継続的に活用できる空間基盤として設計する点が、このタイプの制作会社の特長です。

どの制作会社が優れているかではなく、自社の目的や課題に適しているかどうかが選定の基準になります。

7. メタバース制作会社を選ぶ際の判断軸

メタバース制作会社を選ぶ際、多くの場合は実績数や空間デザインの見た目に目が向きがちです。しかし、本当に重要なのは、どの構造課題をどのように再設計するのかを言語化できるかどうかです。ここでは、失敗しないための判断軸を整理します。

7-1. 空間制作ではなく、目的設計から始まっているか

メタバースは空間を作ること自体が目的ではありません。なぜ導入するのか、どの施策を拡張するのか、単発イベントなのか継続基盤なのかといった前提が整理されていない場合、空間だけが存在し活用されない状態になりやすくなります。

制作会社がヒアリング段階で、目的や成果指標の整理まで踏み込んでいるかどうかは重要な判断材料です。空間の仕様説明から始まるのではなく、構造課題の整理から議論が始まっているかを確認する必要があります。

7-2. 単発施策ではなく、継続基盤として設計されているか

合同企業説明会や展示会をメタバース化する場合、開催して終わりでは意味がありません。開催後も閲覧可能な設計になっているか、次年度施策へ接続できるか、データを活用できるかといった視点が必要です。

単発イベント制作の延長線上にある提案なのか、それとも継続的な基盤設計なのかによって、成果の持続性は大きく変わります。空間を「資産」にできるかどうかが分岐点になります。

7-3. 技術選定が目的と整合しているか

メタバースの構築方法は一つではありません。既存プラットフォームを活用する方法もあれば、独自開発を行う方法もあります。高度な技術を用いることが必ずしも最適とは限らず、参加ハードルや運用体制との整合性が重要です。

ブラウザで参加できる設計なのか、専用機器が必要なのか、更新や運用の負担はどの程度かといった点まで整理されているかどうかが判断軸となります。

7-4. 公開後の運用・改善まで設計されているか

メタバースは公開した時点で完成するものではありません。アクセス状況や回遊データの分析、コンテンツ更新の設計など、運用フェーズが重要です。

制作のみで完結するのではなく、改善サイクルまで提案できているかどうかによって、空間が一時的な施策になるか、継続的な基盤になるかが決まります。

7-5. リアル施策との関係性が整理されているか

メタバースはリアル施策を完全に置き換えるものではありません。リアル開催とオンライン常設空間をどのように接続するのか、対面相談とバーチャル接点をどのように分担するのかといった設計思想があるかどうかが重要です。

リアルを補完・拡張する基盤として位置付けられているかどうかが、制作会社選定の大きな分かれ目になります。

8. まとめ|メタバース制作会社選定で失敗しないために

本記事では、自治体・企業それぞれの構造課題から整理してきました。

自治体では、対面依存や単発施策構造、分野ごとの情報分断といった課題が存在します。企業においても、展示会の期間依存、ショールームの物理制約、採用施策の接触断片化など、共通する構造的制約があります。

こうした課題に対して、メタバースは「空間型接点」として有効な選択肢となります。物理的制約を緩和し、回遊性や対話性を設計し、単発施策を継続基盤へと転換する可能性を持っています。

しかし、メタバースは万能ではありません。目的設計や運用設計が整理されていない場合、空間だけが存在し活用されない状態になりかねません。リアル施策との役割分担を明確にし、なぜメタバースを活用するのかを言語化することが前提となります。

そのうえで、制作会社選定が大きな分岐点になります。

重要なのは、空間の見た目や技術スペックではありません。自治体や企業が抱える構造課題を理解し、それを継続可能な空間基盤へ再設計できるかどうかが、本質的な判断軸です。

メタバース制作会社とは、仮想空間を制作する会社ではなく、施策を再構築するパートナーであるかどうか。この視点を持つことで、単なる話題施策ではなく、持続的な基盤づくりにつながります。

導入を検討する際は、まず自組織の構造課題を整理し、その課題に本当にメタバースが適しているのかを確認することが、失敗しないための第一歩となります。

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