大阪府河内長野市|観光ナビに対話型AIコンシェルジュ「NOIM」を導入。“通過される街”から“もう1箇所寄りたくなる街”への転換を目指す
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DATA
株式会社リプロネクストは、河内長野市と連携し、観光周遊の促進を目的とした対話型AIコンシェルジュ「NOIM(ノイム)」を設計・導入いたしました。
本プロジェクトでは、日帰り来訪者の多くが「道の駅だけ」「登山だけ」「高野山への通過だけ」といった、市内周遊・消費につながっていない構造があることに対し、AI対話を通じて来訪者の目的・移動手段・滞在時間を整理した上で「もう1箇所の寄り道」を提案し、観光消費額の向上と市民の市内周遊を促すことによるシビックプライド醸成を同時に目指しています。
背景・課題
河内長野市は大阪府南東部に位置し、南海高野線で大阪市内から約30分という利便性を持ちながら、国宝を有する観心寺・天野山・金剛寺をはじめ、日本遺産に登録されている歴史文化、岩湧山・ダイヤモンドトレイルなどの自然アクティビティ、関西サイクルスポーツセンター、そして令和8年度完成予定のサッカースタジアムまで、多様な観光資源を有しています。それにもかかわらず、「河内長野に観光で行く」というイメージを持つ人は大阪府民の間でも少なく、ベッドタウンとしてのイメージが根強い状況です。
来訪者アンケート(回答578人)によると、来訪者の78%が大阪府内在住、65.7%が車利用で、日帰りが大半を占めています。日帰り来訪者の平均消費額は10,602円(令和6年度)ですが、この数値を引き上げる上で最も大きな課題となっているのが「目的地単発で完結してしまう」という行動パターンです。
この行動パターンの背景には、いくつかの構造的な課題が存在しています。まず、高野山や金剛山への中継地点として南海高野線沿線に位置しながら、ほとんどの利用者が河内長野駅で降りずに通過してしまう「通過都市問題」があります。金剛山は高尾山に次いで全国2位の登山客数を誇るとされ、冬季には大阪府で唯一の雪山登山ができるため日曜日のバス停には大行列ができますが、登山客のほとんどが下山後そのまま電車に乗り、堺や大阪市内で食事をして帰ってしまいます。次に、観光資源が市内各所に分散しており、車がないとバス乗り換えが必要になるうえ坂が多いため、「一日のストーリー」が描きにくい点も課題です。さらに、市民自身が観光資源を認知しておらず、市外の人に魅力を伝えられていないことも構造的な背景として挙げられます。
河内長野市の観光振興計画では、市外から人を呼ぶことだけでなく「市民がまちの魅力を知り、幸福度を高める」ことを起点に据えています。市民が自分の街を前向きに語り始めれば、それが口コミとなり、外からの誘客にも自然につながるという考え方です。NOIMはこの方針のもと、「来訪者の周遊促進」と「市民の再発見」の両面を支える対話システムとして設計しています。
実施内容
■河内長野市公式サイト
https://kankou-kawachinagano.jp/
NOIMの設計
本プロジェクトで最も重視したのは、「目的地単発の行動を“+1箇所の立ち寄り”に変換する」という設計方針です。観光案内としてスポット一覧を提示するのではなく、来訪者がどこに行きたくて、何をしたくて、その前後にどれくらい時間があるかを把握した上で、無理のない範囲で「もう1箇所」を提案する構造としています。河内長野市のNOIMでは、来訪者を4つのセグメントに分類して対話を設計しています。
また、NOIMのペルソナに河内長野市のマスコットキャラクター「モックル」を採用し、「〜っくる」という語尾を取り入れることで、自治体の公式窓口としての丁寧さを保ちながら親しみのある対話を実現しています。回答のトーンとしては、「こちらがおすすめです」ではなく「もし少し余裕があれば…」、「人気です」ではなく「実は地元の方がよく立ち寄ります」といった、口コミに近い語感を意識していきます。
対話構造
NOIMは、河内長野市の観光ナビ上に設置される対話型AIコンシェルジュです。利用者がNOIMに話しかけると、まず3つの質問で対話の方向性を決定します。「今日の目的は何か(登山・ドライブ・金剛山・高野山・子どもと遊ぶ・市内在住・未定)」「移動手段は何か(車・電車+バス・徒歩/自転車)」「滞在予定はどのくらいか(1時間以内・半日・1日・通過予定)」の3点です。
会話の想定として、大きく分けて、自然・登山、歴史・文化、スポーツ・イベント、市民・日常利用、動線・交通、飲食の6カテゴリで構成しています。時間帯による分岐も設計に組み込んでおり、午前は自然散策、昼は地元ランチ、夕方はカフェ、冬季は寺が池公園のイルミネーションといった提案を行います。なお、バス時刻や営業時間、イベント日程など変動が大きい情報についてはNOIMが断定せず、公式サイトや交通事業者への確認を案内する方針としています。
計測指標
本導入では、周遊提案の受容率(NOIMの「もう1箇所」提案に対する反応や、クリック)を主要指標として追跡します。あわせて、観光消費に関連する行動(飲食・購買・体験ページ)への誘導指標などを計測します。
今後の展望
本導入では、来訪者がどの段階で判断に迷い、どのような「ついで提案」が受容されやすいかをデータとして蓄積し、モデルコースの設計やSNS発信のコンテンツ改善に活用します。NOIM導入によって得られるユーザーニーズデータをもとに、より良い情報発信設計に活用してまいります。