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【最新版】メタバースで広がるひきこもり支援の可能性|全国の自治体最事例10選

【最新版】メタバースで広がるひきこもり支援の可能性|全国の自治体最事例10選

近年、メタバース(仮想空間)を活用した自治体のひきこもり支援が全国で広がっています。
現実の対面相談では心理的なハードルを感じる人でも、アバターを通じて匿名で交流や相談ができるメタバースは、安心して社会とのつながりを持つ新しい手段として注目されています。

本記事では、メタバースの基本から、ひきこもり支援におけるメリット、そして全国の最新自治体事例10選を紹介します。
「支援のあり方を変える新しい取り組み」に関心のある方はぜひ参考にしてください。

1.メタバースとは

メタバースとは、現実世界とは異なるインターネット上に構築された仮想空間を指します。語源は、超越を意味する「meta」と世界を意味する「universe」を組み合わせた造語です。ユーザーはアバターを通じて他者と交流したり、イベント参加や学習、相談など、さまざまな活動に参加できます。

一方で、日本では、ひきこもり状態にある人々が約146万人いると推測され、社会課題となっています。そこで、メタバースを活用したひきこもり支援は、時間や場所の制約が少なく、匿名性を保ちやすいため、対面コミュニケーションが苦手な人でも利用しやすいというメリットがあります。

2.日本におけるひきこもりの現状

内閣府が2023年3月に公表した「こども・若者の意識と生活に関する調査(令和4年度)」によると、引きこもり状態の人が15歳〜39歳で2.05%、40歳〜69歳で2.97%(うち40~64歳で2.02%)となっており、全国で約146万人いると推測されています。

・出典:こども・若者の意識と生活に関する調査(令和4年度)

この調査では、社会的に自立しているかどうかに注目し、以下の外出状況に該当し、6ヶ月以上継続している人(病気などを除く)を「広義の引きこもり」と定義しています。

  • 趣味の用事のときだけ外出する
  • 近所のコンビニ等には出かける
  • 自室からは出るが、家からは出ない
  • 自室からほとんど出ない

また、15〜39歳で上記の外出状況になった理由は「退職したこと」が21.5%と最も多く、次いで「人間関係がうまくいかなかったこと」が20.8%です。一方で、40〜64歳については「退職したこと」が44.5%「新型コロナウイルス感染症が流行したこと」が20.6%の順となっています。

つまり、年代を問わず、退職や人間関係など、誰にでも起こりうる要因が背景にあることが分かります。
さらに、ひきこもりVOICE STATION(厚生労働省)によると、状態が7年以上続く長期化ケースも一定数存在し、近年では40〜64歳の中高年層や女性のひきこもりも増加傾向にあります。
・参考:https://hikikomori-voice-station.mhlw.go.jp/information/

3.ひきこもり支援にメタバースを活用するメリット

こうした現状を踏まえ、自治体や支援団体では、ひきこもり支援の新たな手段として「メタバース」の活用が広がっています。ここでは、メタバースを活用することによって得られる主なメリットについて説明します。

具体的には、メタバースを取り入れることで以下のような利点が期待できます。

  • 時間に縛られる心配がない
  • 肩書きや経歴を気にする心配がない
  • 対面でのコミュニケーションが苦手な人でも利用しやすい
  • 当事者とコミュニケーションがとれる

それでは、上記のメリットを一つずつ見ていきましょう。

3-1.時間に縛られる心配がない

ひきこもりの当事者は昼夜逆転の生活など、生活リズムに偏りが生じているケースもあり、オフラインでは支援を受けにくいといった状況に陥ってしまいます。

しかし、メタバースはオンラインを活用するため24時間いつでも利用が可能です。自分の生活リズムの中で同じ境遇の人たちと交流を楽しめるほか、社会復帰に向けた支援を受けられます。

また、時間に縛られないだけでなく、自宅にいながらでも参加できる点もメリットの一つです。外出することに抵抗がある人でも、オンライン上で完結できるメタバースは社会復帰に大いに役立つでしょう。

3-2.肩書きや経歴を気にする必要がない

さらに、容姿や肩書き、過去の経歴を気にする必要がない点もメタバースの大きな魅力です。ひきこもりの当事者の中には、身体的なコンプレックスや肩書きに悩まされ、一人で悩みを抱えてしまうケースもあります。

そのような悩みを抱えたままでは、十分なコミュニケーションを築けないだけでなく、他人への劣等感を強めてしまうこともあります。
しかし、メタバースでは、自分の分身であるアバターを通じて交流することで、本来の自分を取り戻すきっかけになります。加えて、他のユーザーと悩みを共有することで、孤独感の解消にも役立てられるでしょう。

3-3.対面でのコミュニケーションが苦手な人でも利用しやすい

これまでの支援では、引きこもり当事者と直接コミュニケーションをとることが難しく、支援に限界が生じていました。
しかし、メタバースを活用することで、自宅からでも参加でき、オンライン上で相談員と会話が可能になります。

その結果、当事者は支援に対する心理的なハードルを下げられ、悩みを打ち明けやすくなります。また、相談員にとっても本人から直接話を聞けるようになり、より適切なアドバイスを提供できます。

3-4.当事者とコミュニケーションが取れる

これまでの支援では、引きこもり当事者と直接コミュニケーションをとることが難しく、支援に限界が生じていました。
しかし、メタバースを活用することで、自宅からでも参加でき、オンライン上で相談員と会話が可能になります。

その結果、当事者は支援に対する心理的なハードルを下げられ、悩みを打ち明けやすくなります。また、相談員にとっても本人から直接話を聞けるようになり、より適切なアドバイスを提供できます。

4.メタバースを活用した自治体のひきこもり支援活動10選

メタバースを活用したひきこもり支援は全国で行われています。ここでは、以下の10つの事例について紹介します。

  • 福島県会津若松市「つながり支援メタバース」
  • 山梨県甲府市「全国初。メタバースひきこもり相談窓口」
  • 山梨県ひきこもり支援メタバース「ふらとぴあ」
  • 神奈川県「ひきこもり×メタバース社会参加支援事業」
  • 兵庫県神戸市「ひきこもり当事者会」
  • 大阪府八尾市「メタバースde居場所」
  • 福井県越前市「メタバースこころの保健室」
  • 香川県「ひきこもりの方を対象としたオンラインスペースを開設」
  • 京都府「メタバースを活用したオンライン居場所を開設」
  • 東京都江戸川区「オンラインとリアルを組み合わせた交流会を実施」

4-1.福島県会津若松市「メタバースを活用したひきこもり支援モデルプロジェクト」

福島県会津若松市では、社会的孤立や引きこもり状態にある方々の支援を目的として、行政による相談体制の強化を進めてきました。従来の対面型相談では心理的ハードルが高く、支援につながりにくいケースが課題となっていたことから、Roomiqを活用した「会津若松市つながり支援メタバース」を導入しました。

この取り組みでは、アバターを介して職員と相談ができる仮想空間を構築。利用者は匿名で参加でき、安心して悩みを相談できる環境を整えました。空間デザインには会津の伝統的な町並みをモチーフとして取り入れ、地域性と温かみを感じられる雰囲気に仕上げています。

メタバース相談窓口は、時間や場所の制約を超えて支援を受けられる新しい仕組みとして、利用者からも好評を得ています。会津若松市では、今後もオンライン技術を活用した社会的支援の拡充を目指し、誰もが安心してつながれる環境づくりに取り組んでいます。

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4-2.山梨県甲府市「全国初。メタバースひきこもり相談窓口」

メタバースひきこもり相談窓口

山梨県甲府市健康支援センターは、メタバースプラットフォーム「Roomiq(旧DOOR)」を活用して「甲府市メタバース心のよりどころ空間」を開設。株式会社リプロネクストが開発を担当し、甲府市のひきこもり支援窓口として利用されています。

甲府市には約130人のひきこもり当事者がおり、その中の70%が40〜60歳が占めている状況です。また、地域交流や近所付き合いが減っていることで、ひきこもり当事者の把握が困難であることも今回の取り組みのきっかけです。

「甲府市メタバース心のよりどころ空間」には、以下の2つの空間が用意されています。

  • ひきこもりに関する情報や相談方法がまとめられた「心のよりどころ空間」
  • 甲府市民を対象に精神保健福祉士に相談できる「森の相談ルーム」

甲府市では、メタバースの活用により相談がしやすい環境を構築できるよう取り組みを進めています。

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4-3.山梨県ひきこもり支援メタバース「ふらとぴあ」

山梨県では「ここちよくつながるみんなの居場所」というテーマでひきこもり支援メタバース『ふらとぴあ』を開設いたしました。こちらも当社リプロネクストがメタバース空間の制作とイベントも複数回実施しています。

山梨県の豊かな自然をモチーフとし、悩みを抱える人がリラックスして利用できるよう配慮。支援情報等を確認しつつ、他の空間にアクセスできる「エントランス」や、交流を目的とした「交流広場」、個別相談のための「個別相談ルーム」などのエリアで構成されています。

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4-4.神奈川県「ひきこもり×メタバース社会参加支援事業」

神奈川県 イメージ

出典:神奈川県

神奈川県ではひきこもりの当事者を対象に、他者との交流や就労のきっかけ作りを目的とした「つながり発見パーク」を開催しました。

オープニングイベントでは黒岩神奈川県知事がアバターとして登場。そのほか、Vtuberでキャリアコンサルタントの「癒色えも」さんとメタバースガイドの「おたきゅん」さんがメタバースに関する仕事を紹介しました。

イベント期間中は参加者との交流や、趣味や仕事に関する漫画の閲覧ができるなど、メタバースを通じて自身のキャリアを見つめ直す機会が提供されました。

4-5.兵庫県神戸市「ひきこもり当事者会」

神戸市 イメージ

出典:SUISEI

兵庫県神戸市の神戸ひきこもり支援室は、社会復帰を望むひきこもり当事者を対象とした交流会を開催しました。メタバースプラットフォーム「ovice(オヴィス)」を利用して、アプリの使い方の指導やチャットでの交流、グループワークなどを実施。

参加者からは、同じひきこもり当事者として気軽に話しかけられたといった感想を得られるなど、交流会を開催した意義は大きいものでした。今後は起業家らを招いての交流会なども検討しているとのことです。

4-6.大阪府八尾市「メタバースde居場所」

八尾市 イメージ

出典:産経新聞

大阪府八尾市では、2023年からメタバースを活用したひきこもり支援を行っています。「メタバースde居場所」と称した取り組みでは、漢字や計算のクイズや動画鑑賞など通して交流を行っています。

アバターを通してチャット機能で会話が可能。また、アバター同士が近づくと少人数でのやりとりができるなど、コミュニケーションが取りやすい環境となっています。

取り組みがスタートしてからは子どもたちにも変化が現れるようになりました。ある女子生徒は、ほかの生徒がいる時間帯には入室できなかったものの、時間外にメタバース空間を訪れ課題をこなす姿が見られるようになりました。

メタバースde居場所は、8月に最大50名の小中学生を受け入れるなど、支援の強化を図っています。

4-7.福井県越前市「メタバースこころの保健室」

出典:メタバースメンタル

福井県越前市では、メタバース上に引きこもりなどの悩みを持つ人を対象とした相談や支援を行う「越前市メタバースこころの保健室」を開設。対面での相談が苦手な人でも、アバターを用いて医師との相談や交流が可能です。

2023年2月にメタバースによるヘルスケアコミュニティサービスを展開する「株式会社comatsuna」と協定を締結し、プロジェクトを進めています。

越前市では2021年度に「福祉総合相談室」を開設し、引きこもりに悩む家族との相談や自宅を訪問しての支援といった活動を実施。しかし、引きこもりの当事者に会うことができないと言ったケースもあったことから、今回のプロジェクトが進められることとなりました。

4-8.香川県「ひきこもりの方を対象としたオンラインスペースを開設」

香川県 イメージ

出典:KSBニュース

香川県では2023年4月にひきこもりの当事者向けのメタバース空間「ヒトトキ」を開設しました。ロールプレイングゲームのような空間の中で、アバターを通してほかのユーザーとの交流が楽しめます。空間内では必ず会話をする必要もなく、思い思いの時間を過ごせる点が好評です。

香川県では2020年度にひきこもり支援を行っている3つの団体が協力し、ひきこもり当事者が交流や相談ができる施設を3ヶ所設置しました。2022年度には46名が利用しましたが、対面での相談に不安を抱える人や、アクセスに不便さを感じるなどといった課題も浮き彫りに。

課題を解決し、支援を強化するべくメタバースに注目し、今回の取り組みがスタートしました。今後は、ヒトトキ内でゲームを用いた交流や講演会などを行うとのことです。

4-9.京都府「メタバースを活用したオンライン居場所を開設」

京都府 イメージ

出典:京都府ひきこもり支援情報ポータルサイト

京都府でも、ほかの自治体同様にメタバース空間を活用した支援活動を行っています。不登校経験者向けの学習塾を運営する株式会社キズキが運営しており、2023年4月から週2回実施されています。

活動内容として、アバターを用いての相談や交流、学習支援などを実施。そのほかにもクイズやゲームを用いた交流会や、当事者同士の座談会などがメタバース内で体験できます。メタバース内でのさまざまな取り組みから当事者が抱える悩みを共有し、社会復帰への足がかりを作っていきます。

4-10.東京都江戸川区「オンラインとリアルを組み合わせた交流会を実施」

江戸川区 イメージ

出典:日本経済新聞

東京都江戸川区では、ひきこもり当事者の段階的な社会参加に向けて、メタバースを活用したオンライン居場所を2023年6月に開催。リアル会場との同時開催とし、合わせて29名が参加しました。

江戸川区では、これまでビデオ会議を活用した交流会を実施。しかし、当事者から顔出しに抵抗があるとの意見が出ていたことから、今回メタバース空間を利用しての開催となりました。

オンライン居場所では事前に募集したテーマを投票で決定。「家族にしてほしいこと、してほしくないこと」がテーマに決まり、メタバースから参加していた当事者からは「味方でいてほしい」「暴力は絶対いや」といった意見が寄せられました。

オンライン居場所は今後も開催が予定されており、当事者の社会参加を実現できる取り組みは続いていきます。

5.まとめ

このように、メタバースはひきこもり支援の形を大きく変えつつあります。
内閣府の調査によると、全国で約146万人がひきこもり状態にあると推測されていますが、メタバースを活用することで、より多くの人が社会とつながる機会を得ています。

また、経歴や肩書きを気にせず、自分らしさを出せる点も大きな特徴です。さらに、対面でのストレスを感じずに支援を受けられることから、従来の支援手法では届かなかった層へのアプローチが可能になっています。

今後も、メタバースを活用したひきこもり支援の可能性は広がっていくでしょう。

リプロネクストでは、法人・自治体向けメタバースについて、企画・プラットフォーム選定から開発までを一貫してサポートしています。
「ひきこもり支援にメタバースを活用したい」とお考えの方は、ぜひお気軽にご相談ください。

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