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ひきこもり支援におけるメタバースの位置づけ|全国の自治体最事例10選

ひきこもり支援におけるメタバースの位置づけ|全国の自治体最事例10選

ひきこもり支援や移住相談の分野では、対面を前提とした相談窓口が機能せず、相談の入り口そのものが成立しないケースが多く見られます。そのため、匿名性があり、時間や場所に縛られず、継続的に接点を持てる相談環境が求められています。

ひきこもり支援をめぐる課題は、個人の問題として語られがちですが、実際には家族や地域、行政の支援体制とも密接に関係しています。支援制度や相談窓口が用意されていても、当事者がその存在を知り、実際に利用するまでには多くのハードルが存在します。

こうした背景から、近年では支援の中身だけでなく、「どのように相談の入り口を設計するか」という点そのものが、ひきこもり支援における重要なテーマとして注目されるようになっています。

1. 日本におけるひきこもり支援の現状

内閣府が公表した「こども・若者の意識と生活に関する調査(令和4年度)」によると、日本ではひきこもり状態にある人が15歳から69歳までの幅広い年代に存在しており、全国で約146万人にのぼると推計されています。特定の年齢層に限らず、中高年層や女性にも広がっている点が特徴とされています。

また、ひきこもり状態が長期化するケースも一定数存在しており、数年以上にわたって社会との接点を持てない状況が続くことも少なくありません。このような状況に対し、多くの自治体では相談窓口の設置や訪問支援など、さまざまな支援策を講じています。

一方で、支援が用意されていても、当事者が自ら窓口を訪れることを前提とした設計になっているケースも多く、支援の対象となる層すべてに十分に届いていないという課題が指摘されています。

2. ひきこもり支援が注目される理由

ひきこもり支援が社会的に注目される背景には、当事者本人だけでなく、家族や支援者、地域全体に影響が及ぶ点があります。家族が孤立してしまったり、支援の糸口が見つからないまま時間が経過してしまうケースもあります。

特に、対面相談を前提とした支援では、外出や対話そのものに心理的な負担を感じる当事者にとって、最初の一歩を踏み出すことが難しくなります。その結果、支援制度が存在していても、相談の入り口が成立しない状況が生まれやすくなっています。

こうした課題から、従来の支援の枠組みを前提とせず、当事者の状況に応じて柔軟に接点を持てる支援のあり方が求められるようになっています。

3. ひきこもり支援における主なアプローチとその特徴

ひきこもり支援には、対面相談や電話相談、居場所づくりなど、さまざまな手法が存在します。これらは単純に優劣で選ばれるものではなく、当事者の状態や支援の段階、どのように最初の接点をつくるかによって使い分けられています。

特に、支援の初期段階では「支援の内容」以前に、「相談や参加の入り口に立てるかどうか」が大きな分かれ目となるケースも少なくありません。以下では、代表的な支援手法と、それぞれが担う役割について整理します。

3-1. 対面相談による支援

対面相談は、支援員が当事者の表情や様子を直接確認しながら対応できる点が特徴です。信頼関係を築きやすく、状況に応じたきめ細かな支援につなげやすい手法といえます。

一方で、外出や対話そのものに心理的な負担を感じている場合には、相談の入り口として成立しにくいケースもあります。

3-2. 電話・オンライン相談

電話やオンラインによる相談は、場所の制約を受けにくく、自宅からでも利用できる点が利点です。対面相談に比べて参加のハードルを下げやすく、初期接点として活用されることもあります。

ただし、継続的な関係構築や、相談につながるきっかけづくりという点では、運用方法によって課題が残る場合もあります。

3-3. 居場所型の支援

交流や活動を通じて社会との接点を持つ居場所型支援は、段階的な社会参加を促す手法として活用されています。相談を目的とせず、無理のない関わりから始められる点が特徴です。

一方で、参加そのものに不安を感じる当事者にとっては、最初の一歩が難しくなる場合もあります。

3-4. メタバースを活用した支援(修正版)

これらの支援手法はいずれも有効ですが、対面や音声でのやり取りに強い心理的負担を感じる当事者にとっては、いずれの方法も最初の接点になりにくいケースがあります。

そのため近年では、支援の内容以前に「どのように接点をつくるか」という視点から、メタバースを活用した支援が検討されるようになっています。仮想空間上でアバターを介して参加できるため、顔出しや対面に抵抗がある場合でも、比較的参加しやすい環境を整えやすい点が特徴です。

4. メタバースを活用した支援のメリット・デメリット

4-1. メリット

メタバースを活用することで、時間や場所に縛られずに参加できる環境を整えやすくなります。また、匿名性を保ちやすいため、対面でのコミュニケーションに不安を感じる当事者でも利用しやすい場合があります。

さらに、オンライン上でのやり取りを通じて、当事者との接点を継続的に持ちやすくなる点も特徴の一つです。

4-2. デメリット・限界

一方で、メタバースはすべての課題を解決する万能な手段ではありません。初期段階では参加者が少ない期間が続くこともあり、効果を実感するまでに時間を要する場合があります。

また、対面支援の代替として単独で機能するものではなく、既存の支援施策と組み合わせて設計することが前提となります。

5. 支援サービスを検討する際の考え方

支援サービスを検討する際には、特定の手法ありきで判断するのではなく、いくつかの視点を整理しておくことが重要です。

例えば、どのような層を主な対象とするのか、常設型とイベント型のどちらが適しているのか、相談を主とするのか居場所づくりを目的とするのかといった点は、事前に整理しておく必要があります。

メタバースを含むデジタルな手法は、こうした選択肢の中の一つとして位置づけ、目的や運用体制、支援の段階に応じて検討されることが望まれます。

6. 運営にあたり準備しておくべきこと

実際に運用を開始する前には、庁内での役割分担や対応体制を明確にしておくことが重要です。支援員がどのように関与するのか、対応時間やルールをどのように定めるのかといった点も、あらかじめ整理しておく必要があります。

また、相談内容によっては、既存の支援窓口や対面支援へつなぐフローを用意しておくことも求められます。

7. 運用時の注意点

運用を進める中では、短期間で成果を求めすぎないことも重要です。参加者が少ない期間があっても、それ自体が失敗を意味するわけではありません。

また、最初から深い相談を想定するのではなく、段階的に関係性を築いていく設計が求められます。支援の目的や役割を明確にし、他の施策と併用しながら運用していくことが現実的です。

8.メタバースを活用した自治体のひきこもり支援活動10選

全国の自治体では、ひきこもり支援の入り口を多様化する取り組みの一つとして、メタバースを活用した事例が見られます。常設型の相談空間や、イベント形式の交流の場など、運用形態は地域の状況や目的に応じてさまざまです。

これらの事例は、特定の方法が唯一の正解であることを示すものではなく、支援の入り口を多様化する試みの一例として位置づけられます。ここでは、以下の10つの事例について紹介します。

8-1.福島県会津若松市「メタバースを活用したひきこもり支援モデルプロジェクト」

会津若松市|メタバース相談窓口
会津若松市 障がい者支援課|メタバース相談窓口

福島県会津若松市では、社会的孤立や引きこもり状態にある方々の支援を目的として、行政による相談体制の強化を進めてきました。従来の対面型相談では心理的ハードルが高く、支援につながりにくいケースが課題となっていたことから、「Roomiq」を活用した「会津若松市つながり支援メタバース」を導入しました。

この取り組みでは、アバターを介して職員と相談ができる仮想空間を構築。利用者は匿名で参加でき、安心して悩みを相談できる環境を整えました。空間デザインには会津の伝統的な町並みをモチーフとして取り入れ、地域性と温かみを感じられる雰囲気に仕上げています。

メタバース相談窓口は、時間や場所の制約を超えて支援を受けられる新しい仕組みとして、利用者からも好評を得ています。会津若松市では、今後もオンライン技術を活用した社会的支援の拡充を目指し、誰もが安心してつながれる環境づくりに取り組んでいます。

8-2.山梨県甲府市「全国初。メタバースひきこもり相談窓口」

山梨県甲府市様_ひきこもり支援メタバース_アイキャッチ
山梨県甲府市|全国初!メタバースを活用したひきこもり相談窓口

山梨県甲府市健康支援センターは、メタバースプラットフォーム「Roomiq」を活用して「甲府市メタバース心のよりどころ空間」を開設。株式会社リプロネクストが開発を担当し、甲府市のひきこもり支援窓口として利用されています。

甲府市には約130人のひきこもり当事者がおり、その中の70%が40〜60歳が占めている状況です。また、地域交流や近所付き合いが減っていることで、ひきこもり当事者の把握が困難であることも今回の取り組みのきっかけです。

「甲府市メタバース心のよりどころ空間」には、以下の2つの空間が用意されています。

  • ひきこもりに関する情報や相談方法がまとめられた「心のよりどころ空間」
  • 甲府市民を対象に精神保健福祉士に相談できる「森の相談ルーム」

甲府市では、メタバースの活用により相談がしやすい環境を構築できるよう取り組みを進めています。

8-3.山梨県ひきこもり支援メタバース「ふらとぴあ」

山梨県様 ふらとぴあ
山梨県|メタバースを活用したひきこもり相談窓口「ふらとぴあ」

山梨県では「ここちよくつながるみんなの居場所」というテーマでひきこもり支援メタバース『ふらとぴあ』を開設いたしました。こちらも当社リプロネクストがメタバース空間の制作とイベントも複数回実施しています。

山梨県の豊かな自然をモチーフとし、悩みを抱える人がリラックスして利用できるよう配慮。支援情報等を確認しつつ、他の空間にアクセスできる「エントランス」や、交流を目的とした「交流広場」、個別相談のための「個別相談ルーム」などのエリアで構成されています。

8-4.神奈川県「ひきこもり×メタバース社会参加支援事業」

神奈川県 イメージ

・出典:神奈川県

神奈川県ではひきこもりの当事者を対象に、他者との交流や就労のきっかけ作りを目的とした「つながり発見パーク」を開催しました。

オープニングイベントでは黒岩神奈川県知事がアバターとして登場。そのほか、Vtuberでキャリアコンサルタントの「癒色えも」さんとメタバースガイドの「おたきゅん」さんがメタバースに関する仕事を紹介しました。

イベント期間中は参加者との交流や、趣味や仕事に関する漫画の閲覧ができるなど、メタバースを通じて自身のキャリアを見つめ直す機会が提供されました。

8-5.兵庫県神戸市「ひきこもり当事者会」

神戸市 イメージ

・出典:SUISEI

兵庫県神戸市の神戸ひきこもり支援室は、社会復帰を望むひきこもり当事者を対象とした交流会を開催しました。メタバースプラットフォーム「ovice(オヴィス)」を利用して、アプリの使い方の指導やチャットでの交流、グループワークなどを実施。

参加者からは、同じひきこもり当事者として気軽に話しかけられたといった感想を得られるなど、交流会を開催した意義は大きいものでした。今後は起業家らを招いての交流会なども検討しているとのことです。

8-6.大阪府八尾市「メタバースde居場所」

八尾市 イメージ

・出典:産経新聞

大阪府八尾市では、2023年からメタバースを活用したひきこもり支援を行っています。「メタバースde居場所」と称した取り組みでは、漢字や計算のクイズや動画鑑賞など通して交流を行っています。

アバターを通してチャット機能で会話が可能。また、アバター同士が近づくと少人数でのやりとりができるなど、コミュニケーションが取りやすい環境となっています。

取り組みがスタートしてからは子どもたちにも変化が現れるようになりました。ある女子生徒は、ほかの生徒がいる時間帯には入室できなかったものの、時間外にメタバース空間を訪れ課題をこなす姿が見られるようになりました。

メタバースde居場所は、8月に最大50名の小中学生を受け入れるなど、支援の強化を図っています。

8-7.福井県越前市「メタバースこころの保健室」

・出典:メタバースメンタル

福井県越前市では、メタバース上に引きこもりなどの悩みを持つ人を対象とした相談や支援を行う「越前市メタバースこころの保健室」を開設。対面での相談が苦手な人でも、アバターを用いて医師との相談や交流が可能です。

2023年2月にメタバースによるヘルスケアコミュニティサービスを展開する「株式会社comatsuna」と協定を締結し、プロジェクトを進めています。

越前市では2021年度に「福祉総合相談室」を開設し、引きこもりに悩む家族との相談や自宅を訪問しての支援といった活動を実施。しかし、引きこもりの当事者に会うことができないと言ったケースもあったことから、今回のプロジェクトが進められることとなりました。

8-8.香川県「ひきこもりの方を対象としたオンラインスペースを開設」

香川県 イメージ

・出典:KSBニュース

香川県では2023年4月にひきこもりの当事者向けのメタバース空間「ヒトトキ」を開設しました。ロールプレイングゲームのような空間の中で、アバターを通してほかのユーザーとの交流が楽しめます。空間内では必ず会話をする必要もなく、思い思いの時間を過ごせる点が好評です。

香川県では2020年度にひきこもり支援を行っている3つの団体が協力し、ひきこもり当事者が交流や相談ができる施設を3ヶ所設置しました。2022年度には46名が利用しましたが、対面での相談に不安を抱える人や、アクセスに不便さを感じるなどといった課題も浮き彫りに。

課題を解決し、支援を強化するべくメタバースに注目し、今回の取り組みがスタートしました。今後は、ヒトトキ内でゲームを用いた交流や講演会などを行うとのことです。

8-9.京都府「メタバースを活用したオンライン居場所を開設」

京都府 イメージ

・出典:京都府ひきこもり支援情報ポータルサイト

京都府でも、ほかの自治体同様にメタバース空間を活用した支援活動を行っています。不登校経験者向けの学習塾を運営する株式会社キズキが運営しており、2023年4月から週2回実施されています。

活動内容として、アバターを用いての相談や交流、学習支援などを実施。そのほかにもクイズやゲームを用いた交流会や、当事者同士の座談会などがメタバース内で体験できます。メタバース内でのさまざまな取り組みから当事者が抱える悩みを共有し、社会復帰への足がかりを作っていきます。

8-10.東京都江戸川区「オンラインとリアルを組み合わせた交流会を実施」

江戸川区 イメージ

・出典:日本経済新聞

東京都江戸川区では、ひきこもり当事者の段階的な社会参加に向けて、メタバースを活用したオンライン居場所を2023年6月に開催。リアル会場との同時開催とし、合わせて29名が参加しました。

江戸川区では、これまでビデオ会議を活用した交流会を実施。しかし、当事者から顔出しに抵抗があるとの意見が出ていたことから、今回メタバース空間を利用しての開催となりました。

オンライン居場所では事前に募集したテーマを投票で決定。「家族にしてほしいこと、してほしくないこと」がテーマに決まり、メタバースから参加していた当事者からは「味方でいてほしい」「暴力は絶対いや」といった意見が寄せられました。

オンライン居場所は今後も開催が予定されており、当事者の社会参加を実現できる取り組みは続いていきます。

9.まとめ

メタバースは、ひきこもり支援におけるすべての課題を解決する万能な手段ではありません。しかし、対面を前提とした支援では接点を持ちにくい層に対して、相談の入り口を設計し直す選択肢の一つとして活用されています。

特に、時間や場所の制約、対面での心理的ハードルといった要因によって支援につながりにくかったケースにおいては、匿名性を保ちながら継続的な接点を持てる環境が、支援の第一歩となる場合があります。

一方で、支援の目的や対象者によっては、対面での支援や既存の取り組みと組み合わせて設計することが前提となります。重要なのは、どの手段が優れているかではなく、当事者の状況や段階に応じて、どのような接点を用意するかを整理することです。

メタバースを活用したひきこもり支援は、その選択肢の一つとして、今後も各地域や支援現場の条件に応じた形で検討・活用が進められていくと考えられます。

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