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【事例12選】なぜ今、自治体がメタバースを導入するのか?メリットと実践方法

【事例12選】なぜ今、自治体がメタバースを導入するのか?メリットと実践方法

近年、少子高齢化や首都圏への人口集中が進む中、多くの地方自治体が地域活性化や住民サービスの維持に課題を抱えています。
そんな中、新しい解決策として注目されているのが「メタバース」です。地方自治体がメタバースをどのように活用し、具体的にどのような成果を上げているのか気になる方も多いのではないでしょうか?

本記事では、メタバース活用のメリットや事例12個を詳しく解説し、未来への可能性をご紹介します。

1.メタバースについて

メタバースとは、インターネット上に構築された三次元の仮想空間を指します。利用者はアバターを通じて参加し、世界中のユーザーと交流したり、イベントや商取引に関わったりできる点が特徴です。将来的なインターネットの発展形として語られることが多く、教育・観光・行政情報の発信など、用途は多岐にわたります。

現在、メタバースの定義には幅がありますが、一般的には空間性・自己同一性・大規模同時接続性・創造性・経済性・アクセス性・没入性といった要素を備えたオンライン仮想空間を指すことが多いです。どの要素を重視するかは、サービスやユースケースによって異なります。

2.地方自治体が直面している主な課題

地方自治体がメタバースを検討する背景には、いくつかの構造的課題があります。ここでは代表的な論点を整理します。

  • 人口減少と高齢化
  • 地域経済の衰退
  • 労働力不足
  • 地域活性化の必要性
  • デジタル技術への理解の遅れ

2-1.人口減少と高齢化

多くの自治体で人口が減少し、高齢化が進んでいます。日常の生活利便性やコミュニティ維持が難しくなり、若年層の流出が続くことで地域経済も縮小しやすくなります。若者の定住促進や高齢者の生活支援を組み合わせた取り組みが求められます。

2-2.地域経済の衰退

産業構造の変化や都市部への集中により、地域経済が停滞するケースがあります。地場産業の再編や新規事業の創出、地域資源の可視化・販売促進など、複合的な施策が必要です。

2-3.労働力不足

医療・介護・教育などの分野で人材確保が難しい状況が見られます。職場環境の工夫やテレワーク・兼業人材の活用、地域の魅力発信による人材呼び込みなど、複数の手立てを組み合わせる必要があります。

2-4.地域活性化の必要性

観光資源の磨き上げ、特産品の情報発信、イベント実施など、外部からの関心を高める取り組みが求められます。オンライン・オフラインを横断した回遊設計が鍵になります。

2-5.デジタル技術への理解の遅れ

ICTの導入やデータ活用が十分でない自治体もあります。職員・住民双方のデジタルリテラシー向上や、わかりやすい導入プロセス設計が課題になります。

これらの課題に対して、メタバースは万能薬ではありませんが、情報発信・参加機会の拡張・疑似体験の提供といった局面で、取り得る選択肢の一つになり得ます。

3.メタバースの活用によって地方自治体が得られる5つのメリット

ここでは、自治体がメタバースを取り入れる際に想定しやすい効果を5点に整理します。実際の成果は、設計や運用方針によって左右されます。

  • 地域経済の活性化
  • ふるさと納税の奨励
  • 地域メタバース人材の養成
  • 文化財保存の促進が可能
  • 観光の事前体験と情報発信

3-1.地域経済の活性化

オンライン上のイベントや交流機会を設定することで、地域外の参加者にアプローチしやすくなります。商談会・物産紹介・マッチング企画などを通じて、関連人口との接点を持ちやすくなります。

3-2.ふるさと納税の奨励

地場産品の魅力を3Dで紹介し、外部サイトへ案内する動線を設けることで、寄附検討のきっかけ作りに役立つ場合があります。表現や導線設計はガイドラインに沿って行う必要があります。

3-3.地域メタバース人材の養成

学生・U/Iターン希望者・関係人口に向けて、制作体験やセミナーを提供することで、地域のデジタル人材育成の土台をつくりやすくなります。小規模なワークショップから始める方法も現実的です。

3-4.文化財保存の促進が可能

文化財や景観を3Dで保存・公開することで、学習・啓発・アーカイブに役立つ場合があります。NFT(非代替性トークン)などの技術は著作権や権利処理との関係整理が前提になります。

3-5.観光の事前体験と情報発信

名所や体験コンテンツを仮想空間で紹介することで、訪問前の理解を深める助けになります。現地来訪とオンライン体験の役割分担を設計することが重要です。

次に、実際の自治体事例を概観し、どのような設計・狙いで活用されているのかを確認します。

4.地方自治体によるメタバースの活用事例12選

実際の導入例を把握することで、自地域での適用イメージが具体化します。以下は公開情報や実施概要に基づく事例の要約です(記載は概要レベルです)。

  • 岩手県|メタバースを活用した食の交流会・商談会
  • 山梨県甲府市|全国初!メタバースを活用したひきこもり相談窓口
  • 山梨県|ひきこもり支援メタバース「ふらとぴあ」
  • 静岡県|広報・公聴活動に活用するメタバース空間構築
  • 千葉県市原市|職員採用説明会
  • 茨城県土浦市|バーチャルつちうら
  • 鹿児島県日置市|ネオ日置
  • 富山県黒部市|「愛本刎橋」
  • 山梨県笛吹市|移住・定住促進
  • 広島県横川市|横川メタバース」と「アンジュレガシースタジアムメタバース」
  • 栃木県日光市|教育旅行メタバース

4-1.岩手県|メタバースを活用した食の交流会・商談会

【バイヤー募集中】岩手の“うまいもん”がメタバースに集結。9月11日開催・3年目の食の商談会

岩手県では、食環境の変化に対応し、農産物の販路開拓にさまざまな試みを行ってきました。しかし、近年のライフスタイルや消費行動の変化を踏まえ、新たな販路拡大モデルが求められたそうです。

そこで通常の商談会ではなく、メタバースを活用した商談会を開催。メタバースを活用したことにより、移動コストの削減、現実に近いコミュニケーションを実現し、情報の素早く正確なやり取りが行えるようになりました。

また商談会では、岩手県内の生産者や加工業者が出展し、バイヤーやシェフに対して自然に育まれた安全な食材やこだわりの食品を紹介しました。出展者と参加者が具体的な商談を行い、フリー交流エリアではトークテーマごとに分かれて気軽な交流が行われました。

事例詳細:岩手県様【メタバースを活用した食の交流会・商談会】

4-2.山梨県甲府市|全国初!メタバースを活用したひきこもり相談窓口

森の相談ルームイメージ1

山梨県甲府市が全国初として、メタバースを活用したひきこもり相談窓口「甲府市メタバース 心のよりどころ空間」を開設しました。当社リプロネクストがメタバース空間の制作を担当し、特に気軽な相談環境を提供しています。

相談者はアバターを通じてリアルかつリラックスした雰囲気で相談することが可能です。地方自治体がメタバースを利用したひきこもり支援は全国初の試みで、プライバシー保護のためにチャットや会話データを保管せず、安心感と機密性を確保しました。

また制作したメタバース空間には、共有空間「心のよりどころ空間」と個別相談ができる「森の相談ルーム」の2つが整備されており、対象者は誰でも入室ができます。相談者の落ち着く場所を重視し、今後も改良を進めながら活用を促進するそうです。

事例詳細:山梨県甲府市 様【全国初!メタバースを活用したひきこもり相談窓口】

4-3.山梨県|ひきこもり支援メタバース「ふらとぴあ」

山梨県では「ここちよくつながるみんなの居場所」というテーマでひきこもり支援メタバース『ふらとぴあ』を開設いたしました。こちらも当社リプロネクストがメタバース空間の制作とイベントも複数回実施しています。

山梨県の豊かな自然をモチーフとし、悩みを抱える人がリラックスして利用できるよう配慮。支援情報等を確認しつつ、他の空間にアクセスできる「エントランス」や、交流を目的とした「交流広場」、個別相談のための「個別相談ルーム」などのエリアで構成されています。

事例詳細:山梨県|令和6年度 メタバースを活用したひきこもり相談窓口

4-4.静岡県|広報・公聴活動に活用するメタバース空間構築

静岡県

静岡県では、広聴広報事業で活用していく交流拠点として大規模なメタバース空間「Metaverse SHIZUOKA」を実施しています。

静岡県ではこれまで、タウンミーティングや知事広聴などの意見交換会を通じて、県民の声を県政に反映。しかし、体力的・身体的な制約からそういった場に参加が困難な方も多くいました。

また、働き盛りの若年層においても、忙しさや移動時間などの物理的な理由から意見交換会などへの参加ハードルが高いのが現状です。そこで、メタバースを活用した新たな拠点として、PCやスマートフォンから気軽に意見交換や交流ができる「Metaverse SHIZUOKA」を整備しました。

静岡県を丸ごとスキャンした3次元点群データを活用することで、精細な町並みを再現。空間の一部は全国的にも珍しい24時間利用できる”常設空間”として、2024年1月23日から公開されています。今後、広報・公聴活動のテーマに合わせた空間などを随時構築していく予定です。

事例詳細:静岡県様【広報・公聴活動に活用するメタバース空間構築】

4-5.千葉県市原市|職員採用説明会

参考ページ

千葉県市原市は、職員採用説明会をメタバース空間で実施しています。プラットフォームには「Roomiq(旧DOOR)」を活用し、参加者はアバターを通じて対話的に説明会に参加できます。市原市・千葉商科大学が説明会用の空間を作成し、事務職・土木職・保健師・消防吏員といった職種別ルームを設け、それぞれの説明をアバターで聞ける構成です。

この仕組みは、遠方に住んでいて会場へ来られない人や、オンライン形式ではどうしても一方向になりがちで参加者の関与が薄いという課題への対応として導入されました。アバターを使うことで参加の敷居を下げ、説明者と参加者の双方向コミュニケーションを促進することが狙いです。

採用説明会は、市原市が若手人材確保・地域に根ざした人材の採用強化を目指す中で、市民との接点を拡げるための新しい手段として位置づけられています。将来はこのような形を他の行政説明会などにも応用し、より柔軟な広報・採用活動のモデルとして展開していく可能性が期待されます。

4-6.茨城県土浦市|バーチャルつちうら

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土浦市は、「自転車のまち土浦」の魅力発信と来訪促進を目的に、メタバース空間「バーチャルつちうら」を整備しています。空間内には「りんりんロード」のサイクリング疑似体験(3D/360度動画)、市政情報・名産品の紹介・販売、展示会やセミナー開催などのコンテンツを設けています。

この取り組みは、地域観光資源をデジタルで可視化することで、物理的に訪れる前から土浦の魅力を体感してもらうことを狙いとしています。「りんりんロード」のような自然とアクティビティを軸に、気軽にアクセスできる体験を仮想空間で提供することが特徴です。

また、仮想空間を動かすことで市民や来訪者のニーズを把握し、コンテンツ・機能の拡充を計画しています。将来的には市民交流や観光・地域振興のツールとして、メタバースを活かすことで、地域サービスの向上につなげていく意図があります。

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4-7. 鹿児島県日置市|ネオ日置

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鹿児島県日置市が推進するネオ日置は、メタバース上に「もうひとつの日置」を創造するプロジェクトです。地域の魅力を発信し、市民と観光客の交流を促進することを目的としています。プロジェクトの詳細は、以下のとおりです。

・エントランスエリア:メタバース内の玄関口で、他の空間への入り口が配置されています。ここから日置市内のさまざまなエリアにアクセス可能。

・名所空間:日置市内の名所を再現したエリアです。例えば、霧島神宮や桜島などがあり、市民や観光客が仮想空間でこれらの名所を訪れることができます。

このほかにも商店街やイベント会場など、地域情報を発信する場所があり、地元の特産品や文化に触れられるのも特徴です。ネオ日置は、日本のふるさとを体感できる場所であり、地元高齢者の方々が本物の鹿児島弁を話すなど、日置市民の交流を促進しています。またメタバースを活用することで、遠隔地からも日置の魅力を体験できるようになりました 。

4-8.富山県黒部市|「愛本刎橋」

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地方に残る歴史的建造物や文化資源は、地域の誇りであると同時に観光振興の重要な要素ですが、老朽化や災害で失われてしまうことも少なくありません。富山県黒部市に存在した「愛本刎橋」もそのひとつで、現存しないために後世へ伝える手段が課題となっていました。

そこで今回、最新の技術を活用し「愛本刎橋」をデジタルで再現。往時の姿を臨場感を持って体験できるコンテンツとして公開することで、文化財の保全と観光資源の新たな活用を同時に実現しました。歴史とデジタルが融合した取り組みは、市民や観光客に新しい学びと感動を提供しています。

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4-9.山梨県笛吹市|移住・定住促進

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笛吹市は、移住・定住促進を目的として、ブラウザでアクセスできる仮想空間プラットフォーム「Roomiq(旧DOOR)」を活用したプロモーションサイトを公開しました。この仮想空間には、温泉街・果樹園・里山など地域の風景を模したゾーンや、富士山を望む「FUJIYAMAツインテラス」などの主要スポットを再現したVR映像が含まれています。さらに、移住や定住の相談を受け付ける予約サイトも用意されており、笛吹市での暮らしを想像しやすいコンテンツが揃えられています。

この施策を始めた背景には、自然や温泉、果物づくりなど四季の豊かさがあるものの、「地域外の若者」や「かつての地元住民」の間で、笛吹市での生活や移住を具体的に想像できる機会が限られていたという課題がありました。仮想空間を使うことで、実際に現地を訪れなくても環境を知り、雰囲気を体感できるようにすることが狙いです。

今後は、VR・動画コンテンツの拡充および仮想空間内での移住・定住イベントを開催することで、笛吹市への関心をより高め、「移住・定住を考える一歩」に繋げていく方針です。

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4-10.広島県横川市|「横川メタバース」と「アンジュレガシースタジアムメタバース」

地域活性化を目的に、広島県横川市では「横川メタバース」と「アンジュレガシースタジアムメタバース」の2つのバーチャル空間を構築しました。
リアルとデジタルの融合により、地域住民やサポーターが新たな形で交流できる仕組みを整えています。

横川メタバースでは、まちの商店街や観光名所を3D空間上に再現し、来訪者がアバターで街を巡ることができます。
また、女子サッカークラブ「アンジュヴィオレ広島」が拠点とするレガシースタジアムでは、試合の様子やイベントをオンラインで体験できるようになっています。
これにより、現地に足を運べないファンもチームとつながる機会を持つことができました。

これらの取り組みは、スポーツや地域文化をメタバースで発信する新たな挑戦として注目されています。
リアルな地域経済との連携を意識した運営により、ファンコミュニティや観光促進への発展も期待されています。

▶︎空間リンク:
・横川はこちら
・アンジュレガシースタジアムはこちら

4-11. 栃木県日光市|教育旅行メタバース

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日光市が「教育旅行メタバース『日光の学び旅かなメタバース』」という仮想空間を整備しています。修学旅行や移動教室などで日光市を訪れる児童・生徒・教職員が、事前学習教材として利用できるものです。自由に入れる6つの“ルーム”で構成されており、自然風景・文化遺産・伝統工芸・食・アクティビティなど、日光の多様な魅力を仮想空間で体験できます。例えば、奥日光ルームでは中禅寺湖や華厳滝、戦場ヶ原などの自然を学べ、世界遺産「日光の社寺」ルームでは日光東照宮などの社寺建築やグリーンスローモビリティの体験も含まれています。

この取り組みは、学校での事前学習の一助とすることで、教育旅行の理解を深め、旅行先の選択肢として日光市を意識してもらう狙いがあります。行政としては、生徒たちの旅をより意味あるものにするため、時間や距離の制約を超えて学びを提供する手法と位置付けています。公教育機関が使いやすいよう、学校での活用の条件について情報を提供しており、すべての部屋は誰でも自由に体験できます。

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4-12. 千葉県|「伊能忠敬旧宅」

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千葉県香取市では、歴史的建造物「伊能忠敬旧宅」をメタバース上に再現し、文化財の新たな鑑賞体験を提供しています。
これは、県が推進する「地域デジタル化・観光促進」の一環として実施されたもので、来訪者が時間や場所を問わず、貴重な文化資源に触れられるようにすることを目的としています。

メタバース空間では、伊能忠敬旧宅の建築や当時の暮らしを3Dで再現しており、来訪者はアバターとして空間を歩きながら、展示や解説を体験できます。
また、VR機器を使用することで、現地では見られない角度から建物内部を観察することも可能です。
観光だけでなく、教育現場での歴史学習や地域文化の継承にも活用が期待されています。

この取り組みは、文化財保護と観光デジタル化の両立を目指す先進事例として注目されています。
現地への誘客とオンライン体験を両立することで、地域の魅力発信と新たな観光モデルの構築に寄与しています。

▶空間リンクはこちら

これらの事例は、目的・対象・導線設計によって形が異なります。次の章では、導入時に注意したい基本ポイントを確認します。

5.まとめ

メタバースは、現地の制約を超えて情報発信や参加機会を広げられる手段として位置づけられます。一方で、目的・対象・導線・安全性を丁寧に設計することが成果につながります。まずは小さく試し、得られた知見を次の施策に反映していく進め方が現実的です。

リプロネクストでは、自治体向けの企画設計、プラットフォーム選定、空間制作、運用設計まで一連のプロセスをお手伝いします。自地域の課題や目的に合わせた計画づくりからご相談いただけます。

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