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メタバース×移住|自治体が押さえるべき活用メリット・相談設計・導入手順を徹底解説

メタバース×移住|自治体が押さえるべき活用メリット・相談設計・導入手順を徹底解説

人口減少が進む日本において、地域がどのように移住希望者との接点を創出するかは、これからのまちづくりを左右する重要なテーマとなっています。従来の情報発信や相談会だけでは、地域の魅力や暮らしのリアルな姿を十分に伝えきれない場面も増え、移住希望者が「自分のペースで地域を深く理解できる環境」をオンライン上で提供する必要性が高まっています。

こうした中で注目されているのが、メタバースを活用した移住促進の取り組みです。メタバース空間を通じて地域の雰囲気を疑似体験したり、住民や先輩移住者との交流を行ったりできるため、これまで関心を持ちにくかった層にもアプローチできる点が評価されています。特に若年層では、オンラインで地域を知る行動が一般化しており、デジタル技術を取り入れた移住施策は、新たなスタンダードになりつつあります。

本記事では、「メタバース移住」の全体像や活用メリットをわかりやすく解説し、国内外の事例や導入のポイントを多角的に紹介します。移住施策の新しい可能性を探る方に向けて、今後の地域づくりに役立つ実践的な視点をお届けします。

1. メタバースとは?

近年、国内外で急速に注目を集めているメタバースは、単なる仮想空間ではなく、人々がアバターを介して交流し、情報を得て、体験を共有できる“新しいインターネットの形”といわれています。3D空間上に再現されたデジタル空間の中で、ユーザーが自由に歩き回ったり、他の人と会話したり、イベントに参加したりできる点が特徴です。これらの体験は、従来のWebサイトや動画では得られなかった没入感や臨場感を提供します。

メタバースの定義や国内動向については、総務省の『Web3時代に向けたメタバース等の利活用に関する研究会』報告書でも整理されています。

1-1. メタバースの基本要素

メタバースを構成する主な要素は次の通りです。
・アバター:ユーザーの分身となるキャラクター
・仮想空間:町並みや建物、施設などを3Dで再現
・コミュニケーション機能:音声やテキストチャットによる会話
・インタラクション:イベント参加、移動、案内などの体験

これらが組み合わさることで、リアルに近い“居心地”や“雰囲気”をオンライン上で体感できるようになります。

1-2. メタバースが広がる背景

メタバースが注目される背景には、いくつかの社会的・技術的な要因があります。

・オンラインコミュニケーションが当たり前になった
・ZoomやSNSでは伝わりにくい“空気感”を補える
・若年層を中心に、バーチャル空間での交流が日常化している
・まちづくり、教育、観光など幅広い領域で活用が進んでいる

特に、地域を知るという文脈では「場所に縛られず体験できる」点が大きな強みです。移住検討者が現地を訪れる前に、気軽に街の雰囲気を把握できることは、移住ハードルを下げる要因になっています。

1-3. メタバース活用が自治体・地域にもたらす価値

メタバースは、企業だけでなく自治体・地域施策においても活用が増えています。
その理由は次の通りです。

・地域の魅力を“映像以上・現地未満”の粒度で伝えられる
・参加者が自宅からアクセスできるため、交流の敷居が下がる
・イベントや相談会をオンラインで繰り返し開催できる
・データ取得により、関心の高いエリアや行動履歴の分析が可能
・若年層へのアプローチ強化につながる

これらの特性によって、特に移住施策の初期接点としてメタバースは高い相性を持っています。

1-4. メタバースとVRの違い

誤解されやすいポイントとして、VRとの違いがあります。

・VR:ゴーグルを装着して1人で没入する体験
・メタバース:ブラウザやスマホでアクセスでき、複数人で交流できる空間

移住のようなコミュニティ性の高いテーマでは、複数人で対話しながら街を知れるメタバースのほうが活用しやすいケースが多くあります。

2. 課題・背景

2-1. 地方移住をめぐる社会的課題

日本では人口減少と都市部への人口集中が続き、地方における人材不足や地域活力の低下が深刻化しています。多くの地域で移住促進に取り組んでいるものの、移住希望者が抱える情報不足や不安が障壁となり、決断までに至らないケースは少なくありません。

移住を検討する人の多くは、次のような不安を抱えています。
・実際の生活がどのようなものかイメージできない
・地域コミュニティに馴染めるか分からない
・空き家や仕事など生活基盤に関する情報が不足している
・現地訪問のための距離・時間・費用の負担が大きい

自治体側も、相談会や移住ツアー、PR動画など多様な施策を展開していますが、人的リソースや広報の限界から「継続的な接点づくり」「個別最適化された情報提供」が難しいという課題があります。

2-2. 移住施策のデジタル化が求められる理由

コロナ禍をきっかけに、移住希望者の情報収集の方法は大きく変わりました。オンライン相談会が普及し、SNSや動画で地域情報を調べる行動が一般化したことで、「対面中心の施策だけでは十分ではない」という認識が広がっています。

特に以下の変化が顕著です。
・オンライン相談が当たり前になり、遠距離からの参加が増加
・動画やSNSを通じた“疑似体験型コンテンツ”の需要が増加
・若年層は、デジタルで地域との初期接点を持つことが自然になった

こうした環境変化により、「オンラインで地域を深く理解できる仕組み」に対する期待は高まり、メタバースなど“没入型コンテンツ”が次のアプローチとして注目されるようになっています。

▶オンライン移住相談会の実施事例
農水省白書内「オンラインでの交流、移住相談会を実施(長野県伊那市ほか) 

2-3. 若年層の情報行動と地域PRのギャップ

特にZ世代・ミレニアル世代の情報行動は、従来世代とは大きく異なります。情報取得の中心がテキストから動画、さらに“体験型コンテンツ”へと移行し、YouTubeやTikTokで街の特徴や生活イメージを検索することが日常化しています。

しかし多くの地域では、
・Webサイトが文字情報中心で魅力が伝わりにくい
・リアルイベントがメインで、参加ハードルが高い
・広報手段が従来型のままアップデート不足
といった課題が残っています。

その結果、「関心はあるけれど“生活の実感”がつかめない」という理由で離脱する層が一定数存在します。若年層にとって自然な“体験を伴う情報取得”に応えられないことが、地域と移住検討者のミスマッチを生んでいると言えます。

こうした背景により、地域を直感的かつ体験的に理解できるメタバースの活用は、移住希望者との新たな接点として期待が高まっています。

3. メタバース移住とは何か

メタバース移住とは、仮想空間を活用し、地域の生活環境やコミュニティを疑似体験しながら、移住検討者と地域との接点をつくる取り組みを指します。従来のオンライン相談会やPR動画では伝えきれなかった「街の空気感」「人との距離感」「暮らしのリアリティ」を、デジタル空間の中で直感的に理解できる点が特徴です。

近年では自治体や地域企業だけでなく、民間のメタバースプラットフォームも移住向け機能を拡充しており、地域紹介、空き家案内、交流イベント、コミュニティ形成まで、幅広い活用が進んでいます。

3-1. メタバース移住の基本的な役割

メタバース移住には主に次の3つの役割があります。
・地域の空気感や雰囲気の事前体験
・移住希望者と地域住民の交流機会の創出
・地域情報のわかりやすい可視化

実際に現地へ行かなければ得られなかった体感情報をオンライン化できるため、移住検討の初期段階から深い理解を促すことができます。

3-2. 従来施策との違い

従来のオンライン施策と比較すると、メタバースには明確な特長があります。

・PR動画:一方向で雰囲気は伝わりにくい
・オンライン相談会:双方向だが、空気感の共有が難しい
・Webサイト:情報量はあるが、体験価値が薄い

これに対してメタバースは、
・街を歩くように空間を探索できる
・複数人の参加により、偶発的な交流が生まれる
・イベントや相談会を継続的・反復的に開催できる

特に「人やコミュニティの雰囲気」は移住判断に大きく影響するため、メタバース上での対話体験は情報の質を高める要素となります。

3-3. メタバース移住が支持される理由

メタバース移住が注目を集める背景には、社会行動や価値観の変化があります。

・若年層がバーチャル空間でのコミュニケーションに慣れている
・短時間で複数地域の比較がしやすい
・現地訪問前の「不安」を減らす効果が大きい
・自治体のマンパワー不足を補うデジタルツールとして有効
・オンラインイベントを繰り返し開催しやすい

特に、子育て環境・医療・交通アクセスといった生活情報を「空間」と一緒に理解できる点は、移住検討者にとって大きなメリットになります。

3-4. メタバース移住の主な活用シーン

メタバース移住は、検討初期〜中期の段階で幅広く活用できます。

・地域紹介イベント
・オンライン移住ツアー
・空き家・住宅のバーチャル内見
・生活動線(学校・病院・スーパーなど)の疑似体験
・先輩移住者との交流会
・地域企業紹介、仕事マッチング
・地域イベントのバーチャル体験

このように、メタバースは単なるPR手法ではなく、「地域理解を深める総合的な体験プラットフォーム」としての役割を担いつつあります。

4. メタバース移住でできること

令和6年度 メタバースを活用した食の商談会・交流会

・参考:岩手県|令和6年度 メタバースを活用した食の商談会・交流会事例紹介

メタバースを活用した移住施策では、地域の魅力発信から住民との交流、暮らしの事前体験まで、多様なアプローチが可能になります。ここでは、実際にどのような体験や機能を提供できるのかを、具体的なシーンごとに整理します。

4-1. 地域住民・先輩移住者との交流

メタバースの最大の特徴は、ユーザー同士がリアルタイムで交流できる点にあります。地域住民や先輩移住者がイベントに参加すれば、仮想空間内で自由に会話でき、現地では生まれにくい気軽なコミュニケーションが生まれます。

主な活用例
・移住希望者と先輩移住者の座談会
・若者向け「U・Iターン相談会」を仮想空間で実施
・地域住民との雑談イベント
・地域の“雰囲気”を知るライトな交流会

リアル参加より心理的ハードルが低く、偶発的な交流が生まれやすい点が大きなメリットです。

4-2. 街歩き・名所巡りなどの地域体験

・参考:静岡県|広聴・広報活動に活用するメタバース空間構築 事例紹介(伊豆エリア)

メタバースでは、地域の街並みや自然環境、公共施設などを3Dで再現し、自由に歩き回ることができます。単なる写真や動画では伝わりにくい「立体的な理解」が得られるため、地域の魅力を効果的に伝えられます。

活用できる体験
・街歩きルートを再現したメタバース散策
・観光名所や風景スポットの紹介
・地域の祭りやイベントをバーチャル空間で再現
・地域生活に欠かせない施設(学校・病院・商店等)の紹介

これにより、移住検討者は地域全体の“スケール感”や“生活圏の広さ”を自然に把握できます。

4-3. 空き家や住宅のバーチャル内見

空き家バンクや住宅をメタバース内で紹介する取り組みも増えています。
外観だけでなく、間取りや内装、窓からの眺めなどを360度で確認できるため、現地訪問前の理解が格段に深まります。

利用シーン
・空き家物件の内見会をオンラインで開催
・複数物件を一度に比較できる展示空間の設置
・リノベーション後の完成イメージを可視化

現地訪問前に「候補物件を絞り込める」ため、移住検討の効率が高まります。

4-4. 行政説明や生活情報のわかりやすい可視化

移住の検討過程では、住まい・仕事・子育て・医療など、多くの情報を比較検討する必要があります。メタバースでは、これらの生活情報を“一つの空間に集約”し、直感的に理解できるよう整理できます。


・子育て支援、医療、教育環境をまとめた「ライフスタイル紹介エリア」
・交通アクセス、通勤時間などのシミュレーション
・行政手続きを模擬体験できるガイド空間

文字情報だけでは伝わりにくいことを、空間とセットで視覚化できる点が大きな魅力です。

4-5. データ分析にもとづく施策改善

メタバースはデジタル空間であるため、参加者の行動データを分析できます。

収集できる主なデータ
・どのエリアに長く滞在したか
・参加者同士がどこで会話したか
・どのイベントに多く参加したか
・参加者数の推移や属性(匿名統計)

これにより、従来の移住イベントでは把握しにくかった「関心ポイント」が見える化され、広報施策や空間設計の改善に役立ちます。

5. メタバース移住における相談の重要性

メタバースを活用した移住施策は、地域の雰囲気を体験できる街歩きや生活動線の可視化など、多彩な情報提供ができる点が特徴です。しかし、最終的に移住希望者が意思決定へ進むためには、地域の人と対話しながら不安を解消する「相談」のプロセスが欠かせません。メタバース空間での相談は、単なる情報提供ではなく“対話の質そのものが変化する場”として機能します。

5-1. なぜメタバース移住には相談が不可欠なのか

移住の検討過程では、住まい、仕事、子育て、医療など、個々の生活に直結する疑問が次々と生まれます。これらは自治体の資料や映像だけでは十分に解決できないため、相談という双方向のコミュニケーションが必ず必要になります。メタバース空間での相談は、街の雰囲気を体験した直後に質問ができるため、相談内容が深まりやすい点に特徴があります。また、住民や先輩移住者が同じ空間にいることで、参加者は自然と地域コミュニティの温度感に触れることができ、単なる説明会とは異なる安心感が生まれます。

5-2. メタバース相談で顕在化するニーズ

メタバースで実施する移住相談では、従来のオンライン相談では得られなかったニーズが明確になります。特に多いのは、「まずは地域の雰囲気を知りたい」「顔出しをせずに気軽に参加したい」という初期段階の希望です。

また、自分以外の相談者の質問を聞くことで理解が深まるという声も多く、メタバース空間の“他者と自然に共有できる環境”が参加者の安心感につながっています。押し売り感のない、雑談に近いコミュニケーションが求められる点も特徴的で、初期検討者ほどその傾向は強く見られます。

5-3. メタバースだから生まれる相談者の行動特性

メタバース空間特有の特徴として、相談者が「自分で歩きながら理解を深める」という能動的な行動が生まれます。相談前に街並みを歩くことで質問が自然に思い浮かび、施設の位置関係を確認する過程で生活動線に関する疑問が出てくることも珍しくありません。また、他の参加者の動きや会話が視界や音として入り込むため、自分では気づかなかった観点に興味が移るケースも見られます。住民アバターとすれ違ったタイミングで会話が始まるといった、偶発性の高い対話が生まれることも、メタバース相談ならではの魅力です。

こうした行動は、固定された画面越しの相談では起きにくく、メタバースが持つ“空間そのものが情報源になる特性”が相談内容の深まりにつながっています。

5-4. 成果につながる相談空間の設計

効果の高いメタバース相談に共通しているのは、相談者が自然に動き、気づきが生まれるように設計されている点です。例えば、街歩きエリアを入口に配置することで、参加者は地域のスケール感をつかんだうえで相談に入ることができます。また、子育てや医療、交通といった生活情報をエリアごとに整理すると、「実際に暮らすとどうなるのか」という生活イメージが具体的になります。住まいや仕事の紹介エリアも、資料を並べるだけでなく、スタッフや住民が常駐することで、相談者が立ち寄りやすい環境が整います。

運営面では、初参加者が迷わず空間を歩けるようサポートを行い、複数スタッフで対応することで“待たされない相談体験”を実現できます。さらに、住民や先輩移住者が定期的に参加することで、場全体の雰囲気が柔らかくなり、相談者の不安が溶けやすくなります。これらの要素が組み合わさることで、メタバースならではの相談体験が成立します。

5-5. 運営ナレッジとして重要な視点

メタバース相談を運営する際には、広報・コミュニティ形成・データ活用の三つの視点が重要になります。広報では、「顔出し不要」「初心者でも参加しやすい」というメッセージが参加意欲を高め、若年層と子育て層で開催時間を変えるなど、ターゲットに合わせた設計が有効です。コミュニティ形成においては、住民が定期的に参加することで場の雰囲気が安定し、相談者が安心して質問できるようになります。

データ活用の面では、滞在時間や訪問場所、他者との会話など、空間内の行動データが施策改善に役立ちます。特に、相談中に出た“不安や希望”といった定性的な情報は、自治体が次の施策を検討するうえで貴重な資源になります。

5-6. メタバース相談が意思決定に寄与する理由

メタバース相談が効果的なのは、参加者の心理的距離を大きく縮めることができるからです。街を歩く体験と住民との対話が重なると、移住検討者は「地域を知った」という感覚が強まり、次のステップである現地訪問へのハードルが大きく下がります。他の参加者の様子を見ることで、自分だけが悩んでいるのではないという安心感も生まれます。

これらの要素が積み重なることで、単なる情報取得から“能動的な関心”へと変化し、移住検討の意欲が高まります。結果として、メタバース相談は現地訪問や追加相談につながる重要な接点となり、移住施策の入口として高い役割を果たします。

6. メタバース移住を導入するためのステップ

メタバースを活用した移住施策を実現するためには、ツール選定だけでなく、目的設定や運用体制の準備が不可欠です。ここでは、自治体や地域団体がメタバース移住に取り組む際のプロセスを、実務で使いやすい形で整理します。

6-1. 目的とターゲットを明確にする

まず最初に必要なのは、「なぜメタバースを使うのか」を明確にすることです。移住相談の入り口を広げたいのか、地域の雰囲気を伝えたいのか、または関係人口を増やしたいのか、目的によって必要な機能や空間設計は大きく変わります。

また、誰に参加してほしいのかを定めることで、空間のデザインやイベントの企画がぶれずに進みます。子育て世帯、若年層、デュアルライフ層など、ターゲットのライフスタイルに合わせて情報を整理することが、成功の鍵になります。

6-2. 必要な機能とスケジュールを整理する

メタバースと一口にいっても、街歩き、相談ブース、資料閲覧、動画視聴、イベントスペースなど、多くの機能を組み合わせることができます。導入時には、最初からすべてを盛り込む必要はありません。目的に合わせて、段階的に導入する方法が効果的です。

たとえば、初期段階では「街の雰囲気を伝える空間」だけでも十分に成果が出るケースがあります。その後、参加者のニーズを見ながら相談スペースを追加したり、テーマ別イベントを開催したりすることで、より深い相談につなげることができます。
これらを踏まえて、実装スケジュールを設定し、無理なく運営できる体制を整えることが重要です。

6-3. 事業者・パートナーの選定

空間の制作や運用は、専門事業者と連携することでスムーズに進みます。特に移住系のメタバースは「地域理解」と「コミュニケーション設計」が必要となるため、単に空間を作るだけでなく、参加者の行動設計や相談導線まで含めて設計できる事業者が適しています。

こうした観点から、自治体向けのメタバース活用や移住相談支援を手がける事業者として、株式会社リプロネクストのように、空間制作からイベント運営、コミュニティ支援まで一貫して対応できるパートナーを選ぶことは一定の効果があります。同社は、メタバース空間にAIを組み合わせた相談窓口の実証にも取り組んでおり、24時間対応など新しいサポート体制の可能性を広げています。

また、デジタル展示会を活用した移住相談の取り組みについても実績が公開されており、導入を検討する自治体にとって参考となる内容が掲載されています。

詳しくは、以下のニュースリリースをご覧ください。
https://lipronext.com/news/release/kiraboshi_digital-iju/

6-4. 運営体制と役割分担

メタバース移住は“導入して終わり”ではなく、イベント運営や広報、住民参加の調整など、継続的な運用が求められます。そのため、担当者の負担が過度に増えないよう、役割分担をあらかじめ決めておくことが大切です。

例えば、自治体が全てを抱え込むのではなく、

  • コミュニティマネジメント
  • イベント司会
  • 空間運営
  • データ分析
    といった役割を事業者と分担することで、持続可能な運営体制を構築できます。
    住民参加型にする場合は、地域内の協力メンバーを増やし、相談会の雰囲気づくりをサポートしてもらう仕組みも効果的です。

6-5. 成果指標(KPI)の設定

メタバース活用の効果を測るには、参加人数だけを見るのでは不十分です。むしろ、滞在時間や行動ログ、次のアクション(現地訪問、資料請求、追加相談など)を見ることで、施策全体の成果がより正確に把握できます。

たとえば、

  • 街歩きエリアの滞在時間
  • 相談ブースの訪問回数
  • 住民との会話量
  • 次回イベントへの予約率
  • 現地訪問につながった人数

などは、メタバース特有のデータとして施策改善に役立ちます。

こうした指標を事前に設定しておくことで、導入後の改善サイクルが回りやすくなり、移住施策全体の質を高めることにつながります。

7. メタバース移住の課題とリスク

メタバースを活用した移住施策は新しい可能性を広げる一方で、運用面・技術面・地域コミュニティ面など、いくつかの課題やリスクも存在します。ここでは、取り組みを検討する自治体や地域団体が知っておくべきポイントを整理し、どのように向き合えばよいかを解説します。

7-1. 運用体制の確保と負担の問題

最も大きな課題のひとつが、運営に関わる人員の確保です。メタバース空間の運営は、担当者のPC操作、イベント準備、相談対応、住民との調整など、多岐にわたります。
特に初期段階では、自治体担当者が「空間の使い方」と「イベント運営」を同時に学ばなければならず、負担が増えやすい側面があります。

ただし、運営をすべて自治体が担う必要はありません。コミュニティマネジメントやイベント進行は外部パートナーと連携し、自治体は“企画と判断”に集中する体制をつくることで、実務負荷を大幅に軽減できます。持続可能な運用を実現するためには、はじめから役割分担を明確にしておくことが重要です。

7-2. 費用対効果の検証が難しい

メタバース施策は、空間構築、運営サポート、イベント設計などに一定のコストが発生します。しかし、効果が一度に表れるわけではなく、参加者の増加やコミュニティの成熟には時間を要します。そのため、短期的な数値だけを見ると「効果が見えにくい」と判断されがちです。

一方で、メタバースで取得できる行動ログや相談内容は、移住施策全体の改善に貢献する重要なデータです。滞在時間、訪問場所、相談内容の傾向など、従来の相談会では得にくかった情報を可視化できるため、中長期的な視点で効果を評価する仕組みづくりが求められます。

7-3. 参加者のデジタルリテラシーの差

メタバースの利用は比較的ハードルが低いとはいえ、一定のデジタル操作は必要となります。特に、移住希望者の年齢層が広がると、参加者によって操作理解に差が出る可能性があります。

この課題に対しては、初回参加時に「入室から相談までの簡易ガイド」を提供したり、イベント冒頭に“使い方のミニ説明”を入れるなど、サポート体制を整えることで多くが解決できます。地域住民がサポーターとして参加し、初心者をサポートする運営モデルも有効です。

7-4. 地域住民の理解・参加を得る難しさ

メタバース移住を成功させるためには、オンライン空間だけでなく、地域のリアルコミュニティの協力が不可欠です。しかし、住民の中には「デジタル施策に馴染みがない」「自分たちの活動とどう関係するのか分からない」という感覚を持つ人もいます。

そのため、導入前に“なぜメタバースで相談を行うのか”を丁寧に共有し、住民参加のメリットを明確にすることが大切です。例えば「住民の声を届けやすくなる」「若い世代と自然につながれる」といった価値を伝えることで、参加への心理的ハードルは大きく下がります。

7-5. 運営停止リスクとプラットフォーム依存

メタバース施策では、使用するプラットフォームのサービス継続性も重要です。海外ではメタバースサービスが短期間で終了した例もあり、プラットフォーム依存が大きいと、施策自体の継続に影響が出る可能性があります。

このリスクを減らすためには、

  • 技術基盤が安定していること
  • サービス継続の実績があること
  • もしもの際にデータを移行できる仕組みがあること
    などを確認する必要があります。

また、空間データや運営体制を自治体側でも一定程度保持しておくことで、万が一の場合でも“ゼロからの再構築”を避けられる可能性があります。

8. まとめ

メタバースを活用した移住施策は、地域の魅力を“体験”を通じて伝えられる点に大きな可能性があります。文字情報やオンライン会議だけでは伝わりにくかった生活動線や街の雰囲気を、空間として共有できることは、移住検討者にとって大きな安心材料になります。特に、街歩きと相談が一つの空間で完結することにより、参加者は自分のペースで理解を深めながら疑問を整理でき、結果として対話の質が高まるのが特徴です。

本記事では、メタバースの基本概念から移住文脈での活用可能性、相談が果たす役割、導入プロセス、運用上の課題までを整理しました。なかでも、相談前に空間を歩くという体験が“気づき”を生み、住民との偶発的な対話が地域のリアルな温度感を伝えるという点は、メタバース特有の価値といえます。これは、移住検討の初期段階において特に効果を発揮し、地域との関係構築を自然に始められる利点があります。

一方で、運営体制の確保や住民の理解促進、プラットフォームの選定など、検討すべき課題も存在します。ただし、初期から負担を抱え込む必要はなく、目的に合わせた段階的な導入や外部パートナーとの協働によって、多くの課題は解決可能です。重要なのは、地域として何を伝えたいか、どのような関係を育てたいかを明確にし、その目的に合った空間設計と運営を行うことです。

メタバース移住は、まだ新しい取り組みではありますが、地域と人をつなぐ新しい接点として定着していく可能性を秘めています。デジタルを通じて地域の魅力をより深く、直感的に伝えながら、リアルな移住施策とも連動させていくことで、これまでにない関係づくりが実現します。これからの移住促進において、メタバースは有効な選択肢の一つとなるでしょう。

メタバースを活用した移住相談や地域プロモーションに関心のある自治体・団体の皆さまへ向けて、目的に応じた活用方法や導入ステップをご提案しています。施策の立ち上げから運用設計まで、具体的な検討が必要な場合はお気軽にご相談ください。

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