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#観光 #インタビュー
オフシーズンでも「また来たい」を生む。筏下りVRが実乗船者数1万人突破につながるまで

北山村では、筏下りの魅力をより具体的に伝える手段として、360°VRコンテンツを活用した観光PRに取り組んできました。
本コンテンツは2025年2月に公開され、道の駅や各種イベントでの体験提供、SNS施策と組み合わせた運用を通じて活用されています。
その結果、同年10月には実際の筏下り乗船者数が累計1万人を突破しました。
特に、イベントでのVR体験とSNSキャンペーンを連動させた取り組みにより、若年層や関東圏からの来訪が増加し、地域外での認知拡大にもつながっています。
本記事では、VR導入の背景や運用上の工夫、体験者の反応、そして観光分野にとどまらない波及効果について、インタビュー内容をもとに整理します。
【360°VRで体験する】北山川観光筏下り
【360°VRで体験する】北山村の風景
背景と課題
観光分野において、自然体験やアクティビティの魅力は、実際に現地で体験しなければ伝わりにくいという課題があります。特に、季節限定の体験や天候・安全面の制約を受けるアクティビティでは、オフシーズンや出張PRの場において、写真や映像だけでは臨場感や価値を十分に伝えきれない状況が生じやすくなっています。
その結果、「興味はあるが具体的なイメージが湧かない」「体験する決め手に欠ける」といった状態が生まれ、来訪や再訪につながりにくいという課題が生じています。こうした課題は、北山村の筏下りにおいても同様でした。
この課題に対して、VRを活用した疑似体験型の観光PRは、現地に依存せずに臨場感や体験価値を伝えられる手段として有効です。視点や距離感、没入感を伴う体験を通じて、来訪前から「体験したい」という感情を喚起し、再訪のきっかけづくりにつなげることができます。
一方で、VRは現地体験そのものを代替するものではなく、あくまで興味喚起や理解促進を目的とした補完的な手段として、現地施策やイベントと組み合わせて活用することが前提となります。
※以下、インタビュー内容をもとに整理しています
導入のきっかけと目的:オフシーズンに魅力をどう伝えるか
―VRを導入しようと思ったきっかけは何でしたか?
筏下りは5〜9月限定のアクティビティであり、オフシーズンには魅力を伝える手段が限られていました。
出張PRでは写真や動画を用いて説明していましたが、川の迫力や岩肌との距離感といった臨場感までは伝えきれず、「体験したことがない人には想像しづらい」という課題がありました。
そこで検討されたのが、擬似体験ができるVRの活用でした。
オフシーズンに訪れた観光客が「次は筏下りの時期に来たい」と思えるきっかけをつくり、その反応を測ることを目的として導入が決まりました。
設置と運用:あえて自由体験にしなかった運用設計


―VRはどの場所にどのように設置しましたか?
VRは、道の駅に常設する形で設置されています。
ただし、筏下りのシーズン中は、実際に乗船予定の人が事前に体験してしまうとネタバレになってしまうため、誰でも自由に体験できる形式は採用していません。
現在は、「見てみたい方は窓口へ」という案内を行い、観光案内所のスタッフとの会話の中で体験を促す運用を行っています。
来訪者が自分でゴーグルを装着する方式ではなく、スタッフがサポートしながら体験してもらうことで、操作のハードルを下げつつ、体験前後の感想を直接聞ける点もメリットだと感じています。
導入時の工夫と機材構成
―導入時に工夫した点や課題はありましたか?
VRの使用方法については、導入時にサポートを受けており、操作面で大きな課題はありませんでした。
むしろ、ゴーグルという“モノ”が目の前にあることで、「せっかくだから見てみたい」という関心を引きやすく、目新しさそのものが体験の入口になっていました。
機材は合計4台を導入。
イベント時には3台を持ち出しましたが、想定以上に体験希望者が多く、充電しながらでも足りないほどの大盛況でした。
2台を充電し、2台で体験してもらう形で交代運用することで、フル稼働に近い状態でも対応しました。
万博イベントでの展示と手応え

万博関連イベントでは、VRゴーグルに加えてモニターを併設し、Wi-Fiのデザリングを使って映像をミラーリングしました。
体験者だけでなく、周囲の来場者にも映像が見える構成にしたことで、「何をやっているのか」が一目で分かる展示となりました。
会場では、他の市町村がモニター展示を行っていない中、北山村のブースだけが映像を可視化しており、結果として列が最も長くなったのではないかと思います。
VR単体ではなく、周囲からも体験内容が伝わる見せ方が、関心を集める要因となりました。
利用者の反応 「本物に乗りたい」という声
―実際に体験した方の年齢層や、寄せられた反応について教えてください。
体験者は子どもから年配の方まで幅広く、3D映像ならではの臨場感が世代を問わず強い印象を残しました。
岩肌に近づくシーンでは、思わず体を避けたり、声を上げたりする反応も見られ、「絶対行きたい」「本物に乗りたい」といった声が多く寄せられました。
また、SNSフォローを条件にしたキャンペーンでは、2日間で約800人の登録者が増加。
パンフレット配布よりも、VR体験と連動させた施策の方が、反応を測りやすかったです。
効果と波及:観光を超えた活用へ
―他の観光施策との相乗効果(PRイベント、メディア露出など)はありましたか?
VRとSNS施策を組み合わせたことで、20代の来訪者が増加し、関東方面からの来訪比率も高まりました。
プレスリリース後は想像以上に取材が入り、VRゴーグル自体が“絵になる素材”として記事化されるなど、PRの好循環も生まれました。
さらに、職員からは「これならしっかりPRできる」という声が上がり、教育委員会や大学、公民館活動、地域イベントなど、観光以外の分野でも活用が広がっています。
撮影時に筏師の協力を得たことで、関係者が関わったからこそ実現できた取り組みとして、地域内外からの関心も高まりました。
今後の展望
―今後VRをどのように活用・拡大していきたいと考えていますか?
今後はVRコンテンツの追加や、複数台を一括管理できる仕組みへの期待が挙がっています。
筏下りに加え、ラフティングなど、臨場感のあるアクティビティへの展開も視野に入れており、「体験を通じて魅力を伝える」観光PRは、さらに広がっていきそうです。