メタバース
#自治体 #相談・交流
メタバース区役所とは?自治体DXを支える仮想行政サービスの最新動向

近年、自治体DXの推進が全国で加速する中、行政サービスの新たな提供方法として「メタバース区役所(メタバース役所)」が注目されています。メタバースとは、ユーザーがアバターと呼ばれる分身を通じて他者と交流したり、活動を行ったりできる三次元の仮想空間で、教育やビジネスの分野に加えて行政領域への活用も広がりつつあります。
なかでも、来庁不要で相談ができる仮想窓口や、住民がオンラインで行政手続きにアクセスできる仕組みは、自治体が抱える人材不足や高齢化などの課題解決に向けた新たなアプローチとして注目されています。物理的な制約を超えて行政サービスを提供できるメタバース区役所は、住民の利便性向上と行政運営の効率化の両立を実現する取り組みとして期待されています。
1. メタバースとは
メタバースは、現実とは異なるインターネット上の三次元仮想空間を指します。語源は、超越を意味する「meta」と世界を意味する「universe」を組み合わせた造語で、“現実を超えたもう一つの世界”を表します。この空間では、利用者がアバターを通じて他者と交流したり、学習やビジネス、創作活動を行うことができます。
1-1. 行政領域での活用が進む背景
近年では、VRデバイスがなくてもPCやスマートフォンからアクセス可能な軽量型のメタバースが普及し、幅広いユーザーが利用しやすい環境が整っています。また、NFTや仮想通貨などを活用したデジタル経済圏の形成が進んでおり、地域活性化や行政DXとの相性の良さが注目され、行政領域での活用も加速しています。今後は、行政サービスのデジタル化を支える基盤としての役割が期待されています。
2. 行政サービスとメタバースの融合
人口減少や高齢化、職員不足などの課題により、自治体は従来の窓口中心の対応だけでは住民のニーズに十分応えられなくなっています。特に、忙しい社会人や子育て中の家庭にとって、役所の営業時間に合わせて来庁する負担は大きく、時間・物理的制約を受けない行政サービスが求められています。
2-1. メタバース行政が進む背景
メタバース区役所やオンライン窓口は、来庁が難しい住民の支援、災害時の行政継続、感染症流行時の非対面対応など、多岐にわたってメリットがあります。さらに、デジタル庁・総務省も住民目線のデジタル窓口整備を推進しており、メタバース役所は自治体DXの次なるステップとして注目されています。
2-2. メタバース行政で期待される価値
アクセシビリティの向上、多様な住民への対応、行政負担の軽減、広域連携の促進、行政イメージの刷新など、さまざまな価値を生み出す可能性があります。
3. メタバース区役所の仕組みとメリット・デメリット
3-1. メタバース区役所の仕組み
メタバース区役所とは、仮想空間に区役所の建物や窓口を再現し、オンラインで手続きや相談を行える仕組みを指します。利用者はアバターを通じて職員と音声・チャットで相談でき、住民票関連、税務、福祉、子育てなど、従来窓口で行っていた業務の多くをオンライン化できます。三次元空間の構築、セキュリティ設計、UI/UX改善など、複数の技術要素が必要となり、住民が迷わず操作できるガイド機能などの設計も重要になります。
3-2. メタバース区役所のメリット
・時間と労力の節約
住民は自宅や職場から手続きを進められ、移動や待ち時間の負担が大幅に軽減されます。複数窓口を巡る必要も省かれ、子育て世帯や高齢者、身体が不自由な方にとっても利用しやすくなります。
・24時間対応
メタバース区役所は24時間アクセス可能で、夜間や休日でも手続きができるため、従来の営業時間に縛られない柔軟な行政サービスが実現します。
・使いやすいインターフェース
視覚的にわかりやすい空間設計や案内表示を用いることで、初めて利用する人でも操作しやすいのが特徴です。アバター操作に加えてガイド機能や自動案内も実装でき、デジタルが苦手な人でも迷わず利用できます。
・データの安全性
行政水準のセキュリティ環境のもと、個人情報や申請データを厳重に管理できます。暗号化通信、アクセス制御、ログ管理などにより、不正アクセスやデータ漏えいのリスクを抑制できます。
・迅速な対応
手続き完了通知が即時で届くほか、複数部署間での情報共有がスムーズに行えるため、住民が複数窓口を回る必要がありません。相談内容に応じて担当部署へ瞬時に接続するなど、行政運営の効率化にも寄与します。
3-3. メタバース区役所のデメリット
・高い技術要件と導入コスト
三次元空間構築、セキュリティ設計、運用体制の整備には高い技術力とコストが必要です。継続的な更新や保守のため、外部企業との連携も欠かせません。
・利用者の教育・操作支援が必要
アバター操作やオンライン手続きに慣れていない住民にはサポートが必要です。ガイド機能、操作説明会、電話での支援などの体制が求められます。
・ネットワーク環境の影響
通信環境が不安定な場合、動作が遅れたり接続が途切れたりする可能性があります。行政手続きの途中での接続障害は不安につながるため、事前の環境案内が重要です。
・デジタルディバイドの懸念
メタバース区役所は便利ですが、デバイスやインターネット環境がない住民は利用できません。多様な住民に対応するため、従来の窓口も併存させる必要があります。
・プライバシーとセキュリティへの懸念
行政サービスでは重要な個人情報を扱うため、仮想空間でも強固なセキュリティ対策が求められます。利用者のパスワード管理など、住民側の意識も重要です。
4. 事例紹介:江戸川区のメタバース区役所実証実験

出典:知財ニュース
江戸川区では、来庁不要の行政サービスを目指して「メタバース区役所」の実証実験を実施しています。
Roomiq(旧DOOR)を活用し、区役所の外観や1階総合窓口、個別相談スペースなどを仮想空間に再現しました。
利用者は自宅やオフィスなどからアクセスし、アバターを通じて職員と音声やチャットでやり取りできる仕組みを整えています。
この取り組みの対象は、現時点では福祉関係者や区職員など限定的ですが、将来的には教育、子育て、健康など幅広い分野への展開も検討されています。
目的は、高齢者や身体が不自由な方、聴覚障害を持つ方など、来庁が難しい人々に対して相談を受けやすくすることです。
心理的・物理的なハードルを下げ、より多くの区民が行政サービスを利用できる環境づくりを目指しています。
江戸川区では、DX推進指針のもと、新庁舎移転(令和10年)を契機として、こうしたオンライン窓口の拡充を進める方針を掲げています。
実証実験を通じて得られた知見をもとに、メタバースを活用した行政サービスの具体的な運用モデルを検討していく予定です。
5. メタバース区役所の注意点
メタバース区役所の導入・運用にあたっては、利便性が高い一方で、新しい仕組みならではの注意点を理解しておく必要があります。ここでは、利用者・自治体の双方が意識すべき主なポイントをまとめます。
5-1. プライバシー保護の重要性
メタバース区役所では個人情報を扱う場面が多く、情報管理には細心の注意が必要です。仮想空間での通信内容や操作履歴が不適切に扱われると、情報漏えいや詐欺につながる可能性があります。暗号化通信やアクセス制限など、技術的な安全対策が十分に講じられているか事前に確認することが重要です。
5-2. 適切なアカウント管理
アバターやログイン情報は、住民一人ひとりの「行政サービス利用の入口」になります。パスワードの強化・定期的な変更・二段階認証の利用など、基本的なアカウント管理を徹底することで、不正アクセスを防止できます。自治体側も、職員アカウントへの権限管理を明確にする必要があります。
5-3. サポート体制の整備
メタバース区役所の利用が初めての住民にとっては、操作方法や手続きの流れに不安が生じる場合があります。そのため、困った際にすぐ相談できるサポート窓口やガイドコンテンツの整備が欠かせません。利用者向けFAQや動画マニュアルの提供も有効です。
5-4. 利用規約とプライバシーポリシーの確認
メタバース区役所を利用する前に、どのような情報が収集され、どのように利用されるのかを明確に理解しておく必要があります。利用規約やプライバシーポリシーを確認することで、安心して行政サービスを受けられます。自治体側も、住民が理解しやすい形で情報を伝える工夫が求められます。
5-5. 自己責任の意識
メタバース区役所は便利ですが、利用者自身が情報を適切に扱う姿勢も必要です。不審なリンクや外部サービスとの連携には注意し、正確な情報に基づいて手続きを進めることが大切です。万が一トラブルが発生した場合、早めに自治体へ相談することも重要です。
6. まとめ
メタバース区役所は、行政サービスをより使いやすく身近なものにする新しい取り組みです。自治体DXの推進や住民との新しいつながりを生み出す仕組みとして期待が高まっています。今後、AIやブロックチェーンとの連携により、さらに高度で安全な行政サービスの実現が見込まれます。
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