メタバース
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【製造業×メタバース】国内企業の最新活用事例8選と導入メリットを徹底解説

近年、メタバースの活用が製造業にも広がりを見せています。
一見、ゲームやエンタメの印象が強いメタバースですが、実は設計・教育・採用・広報など、製造業のあらゆる分野で導入が進んでいます。
3DCGやVR技術を活用した「メタバース空間」は、距離や時間の制約を超えてリアルな体験を共有できる点が大きな特徴です。設計段階でのシミュレーションやリモート研修、バーチャル展示会、企業ブランディングなど、多様な領域で業務効率化と新たな価値創出を実現します。
本記事では、製造業におけるメタバース活用のメリットや国内企業の最新事例を紹介します。
「製造業の魅力を新しい形で発信したい」
「採用・研修・広報にデジタル技術を取り入れたい」
「DXの一環としてメタバース導入を検討している」
そんな経営層やDX推進担当の方は、ぜひ参考にしてください。
1.メタバースとは
メタバースとは、「メタ(meta)=超越した」と「ユニバース(universe)=世界」を組み合わせた造語で、インターネット上に構築された仮想空間を指します。ユーザーはアバターを介してその空間に入り、他者と交流したり、ビジネス活動を行ったりすることができます。
近年では、3DCGやVR技術の進化により、現実に近い空間表現が可能になり、企業の新たな価値創出の場としてメタバースを活用する動きが広がっています。特に製造業においては、設計・シミュレーション・教育・採用など、従来の業務をデジタル空間に置き換えることで効率化とイノベーションを実現する事例が増えています。
また、メタバースは人や情報をオンライン上でつなぐことができるため、移動コストをかけずに会議や展示会を開催するなど、地理的な制約を超えたビジネス展開が可能です。
製造業界でも、こうした特性を活かしてバーチャル工場見学、バーチャル展示会、インダストリアルメタバース構築などの取り組みが進められています。
今後、メタバースは単なるデジタル空間ではなく、「現実のビジネスを支える新たな基盤」として、製造業をはじめとする企業DXの中核を担うことが期待されています。
2.製造業でメタバースを活用するメリット
製造業におけるメタバースの導入は、単なるデジタル化にとどまらず、組織全体のコミュニケーション効率・開発スピード・人材育成の質を高める革新的な取り組みとして注目されています。
ここでは、企業がメタバースを活用する主な5つのメリットを紹介します。
2-1. 認識を共有しやすく、コミュニケーションコストが下がる
メタバース空間では、製品のデザインや構造を3DCGで可視化しながら、複数拠点の関係者が同時に確認・議論できます。
従来の2D図面やオンライン会議では伝わりづらかった細部も、3D化されたモデルを共有することで直感的に理解できます。
これにより、設計者・営業・経営層が同じ視点で意思決定を行えるようになり、開発プロセス全体のスピードと精度が向上します。
製造業におけるメタバース活用は、社内外の「共通認識づくり」の面でも大きな効果を発揮します。
2-2. 研修の標準化・効率化が図れる
製造業では、現場教育や安全研修が欠かせません。
メタバースを活用すれば、現実の工場や作業環境を再現した仮想トレーニング空間を構築できます。
全国の拠点にいる新入社員が同時に参加できるため、移動費や宿泊費などのコストを抑えつつ、統一された教育内容を提供可能です。
また、熟練技術者のノウハウをバーチャル上で再現することで、技能伝承の効率化や人材育成の質の向上にもつながります。
2-3. 採用時のミスマッチを軽減できる
採用活動でも、メタバースは有効なツールです。
求職者はメタバース上のオフィスや工場を自由に見学でき、企業文化や職場の雰囲気をリアルに体感できます。
さらに、アバターを通じて社員と対話することで、仕事の内容やキャリアの実態をより深く理解できます。
これにより「入社前のイメージと実際のギャップ」を減らし、採用後のミスマッチ防止と定着率の向上を実現します。
2-4. 遠方の方にもサービス・商品の魅力を訴求できる
メタバースは、バーチャル展示会やオンラインショールームなど、場所を選ばずに自社製品を発信できる新しいマーケティングの場としても活用されています。
全国や海外の顧客に対しても、製造工程の見学や製品デモをリアルタイムで体験してもらうことができ、従来の対面営業を超えたグローバルな営業展開が可能です。
また、未発売製品のコンセプト展示など、現実では難しい演出を実現できるのもメタバースならではの強みです。
2-5.設計シミュレーションの精度向上・コスト削減
メタバース空間を活用すれば、製品設計や組み立て工程を3Dデータ上で正確に検証できます。
2D図面では見落としがちな構造上の問題を事前に把握できるため、試作回数を減らし、開発コストを大幅に削減可能です。
また、複数のエンジニアが同時に同じモデルを確認できるため、リアルタイムでの修正や意思決定がスムーズになります。
結果として、製造プロセス全体のDX推進と競争力強化につながります。
このように、メタバースは製造業の課題解決と競争力向上を支える実践的なDXツールです。
次章では、実際に企業がどのようにメタバースを活用しているのか、具体的なシーン別に見ていきます。
3.製造業でのメタバース活用方法

製造業におけるメタバース活用は、単なる仮想空間の展示や見学にとどまりません。
営業・採用・広報・ESGといった企業活動全体をデジタル上に再構築するDX戦略の一環として注目されています。
ここでは、製造業で実際に広がっているメタバースの活用シーンを4つ紹介します。
3-1. 営業活動
近年、非対面営業やオンライン商談が定着する中で、メタバースを営業ツールとして活用する企業が増えています。
メタバース空間上に工場見学ルームや製品展示ブースを設けることで、製造プロセスや設備の特徴をリアルに伝えられます。
3D空間での製品説明は、パンフレットや動画以上に理解を促し、顧客とのコミュニケーションを深めます。
また、国内外のバイヤーに向けたバーチャル展示会も開催可能で、地理的制約を超えた新規顧客開拓の機会を創出できます。
「メタバース×製造業」の組み合わせは、営業力強化とブランディングの両面で効果を発揮しています。
3-2. 採用活動
採用の現場では、企業の雰囲気や働く環境を体験的に伝える「メタバース採用」が注目されています。
就活生はメタバース空間でオフィスや工場を見学し、アバターを通して社員と直接対話できます。
これにより、遠方からでもリアルな職場体験が可能になり、応募前の理解促進と入社後のミスマッチ防止につながります。
また、企業にとっても採用イベントや会社説明会をオンラインで開催できるため、コストを抑えながら多様な層にアプローチ可能です。
こうした取り組みは、若年層やデジタルネイティブ人材への訴求にも有効です。
3-3. 広報活動
製造業では、製品や技術の魅力を伝えるためにメタバースを広報活動に活用する企業が増えています。
バーチャル展示会やオンラインショールームをメタバース内に構築し、3DCGで再現した製品を並べることで、企業ブランディングの新しい形を実現。
さらに、ユーザーが実際に操作・体験できるインタラクティブな仕掛けを取り入れることで、より深い理解と記憶に残る体験を提供できます。
画像や動画では伝えにくい製品の質感や動作をリアルに表現できるため、BtoBマーケティングにおいても高い効果が期待されます。
3-4. ESG・サステナビリティへの活用
製造業においても、ESG経営やサステナビリティへの関心が高まる中、メタバースを情報発信・共感醸成のプラットフォームとして活用する動きが見られます。
環境に配慮した生産プロセスや地域貢献活動などを、メタバース空間で再現・可視化することで、企業の取り組みをよりリアルに伝えることができます。
たとえば、仮想空間内で原材料調達から製造・出荷までの流れを見せることで、**「見える化されたESG活動」**として投資家・消費者・学生など多様なステークホルダーに訴求できます。
このように、メタバースは製造業の社会的価値を発信する新たな広報・教育の手段として注目されています。
次章では、実際にメタバースを活用している国内製造業企業の事例8選を紹介します。
どのような課題を背景に、どのような目的で導入が行われているのかを詳しく見ていきましょう。
4.製造業でのメタバース活用事例8選
国内でも、メタバースを活用する製造業企業が増加しています。
設計・広報・採用・展示会など、目的はさまざまですが、共通しているのは「デジタルを活かして製造の魅力を伝える新しい体験づくり」という点です。
ここでは、先進的な取り組みを行う8つの企業・団体の活用事例を紹介します。
4-1.日亜鋼業株式会社|ワイヤーに特化したメタバーステーマパークを開設

線材加工製品メーカーの日亜鋼業株式会社は、自社製品の認知拡大と若年層への訴求を目的に、メタバース空間「NICHIA METAVERSE WIRE WORLD(日亜メタバースワイヤーワールド)」を開設しました。
生活者にはなじみの薄い“ワイヤー”製品を、遊びながら学べるテーマパークとして再構築。
メタバースを通じて、自社技術が日常生活を支えていることを体験的に理解してもらう設計になっています。
製造業におけるBtoC認知を高める活用事例として注目されています。
▶▶日亜鋼業株式会社|メタバースによるテーマパーク「NICHIA METAVERSE WIRE WORLD」 事例詳細はこちら
4-2.日産自動車株式会社|バーチャルショールーム「NISSAN CROSSING」

出展:日産自動車株式会社
日産自動車株式会社は、メタバースプラットフォームの「VRChat」にバーチャルギャラリー「NISSAN CROSSING」を公開しました。
新車発表会や講演などの催しはもちろん、実際の自動車のデータを元に作ったハイクオリティーな3D自動車を公開し、新たなコミュニケーションの場としても展開しました。
実際にギャラリーに行く前の下見や「気になるけれどショールームが遠くていけない」というユーザーに、効果的にアプローチができるマーケティング事例です。
4-3.FactorISM|ワープ型オープンファクトリー
参加者はVRヘッドセットを装着し、没入感のある工場見学ができる「ワープ型オープンファクトリー」の事例です。
一回の参加で2ヶ所の工場見学をすることができ、まるで現地にワープしたような感覚で製品やサービスの魅力を知ることができます。
現地を巡る見学では移動に時間が必要ですが、メタバースやVRの技術を使うことで場所を移動せずに複数名で工場見学ができます。
4-4.進工業|メタバースゲーム「SUSUMU JUMPERS(ススムジャンパーズ)」を開発
進工業株式会社では、自社の技術力とブランドイメージをより多くの人に知ってもらうため、若年層を中心に訴求できる新たなプロモーション手段を模索していました。特に、従来の展示会やカタログだけでは伝わりにくい「ものづくりの楽しさ」をデジタルの場で表現することが課題でした。
株式会社リプロネクストは、こうした課題に対し、進工業の企業キャラクター「ススムくん」を主人公にしたメタバースゲーム「SUSUMU JUMPERS(ススムジャンパーズ)」を開発。プレイヤーがジャンプで障害物を避けながらステージを進むシンプルなゲーム設計を通じ、遊びながら企業の姿勢や魅力を自然に体験できる仕組みを実現しました。
▶▶進工業|メタバースゲーム「SUSUMU JUMPERS(ススムジャンパーズ)」を開発 事例詳細はこちら
5-5.京セラ|メタバース展示会

出典:東証マネ部!
京セラの機械工具事業本部は、2022年11月8日〜13日の6日間にメタバースプラットフォーム「VRChat」内で展示会を開催。
同時期にリアル出展していた工作機械の展示会に合わせてメタバース会場を設け、同社の切削工具や、高能率加工によるカーボンニュートラルへの取り組みを紹介したそうです。
現地に行けない方にも、商品や企業の取り組みをPRできるのがメタバースの魅力。
会場には、社長自らアバターとなって参加したこともあり、新しいものを柔軟に取り入れて市場を拓いていく企業姿勢もうかがえます。
5-6.オムロン|バーチャル展示ブース

出典:オムロン 公式サイト
オムロンはメタバースプラットフォーム「cluster」上で、バーチャル展示会ブースを常時公開しています。
近未来的な空間の中では、オムロンの長期ビジョン「Shaping the Future 2030」や主要事業が動画で紹介されていたり、同社が開発した卓球ロボット「フォルフェウス」とのラリー体験ができたりと、様々なコンテンツが用意されています。
企業のカルチャーやサービスを体験しながら学ぶことができるメタバースは、お客様向けとしてはもちろん、採用向けコンテンツとしても活用できるでしょう。
5-7.川崎重工業|インダストリアルメタバースの構築
出典:川崎重工業公式サイト
川崎重工業は、Microsoft社と連携して進めているインダストリアルメタバースの取り組みが「Microsoft Build 2022」にて紹介されました。この取り組みでは、インダストリアルメタバースを用いて顧客やパートナーと連携しながら新しいロボットビジネスを作るための環境構築を目的としています。
川崎重工業では「安全安心リモート社会」や「近未来モビリティ」「エネルギー・環境ソリューション」といった領域に力を入れること表明しています。将来に向けた課題克服のためにソリューションの創出を目指していくとのことです。
5-8.大成建設|建設承認メタバース
出典:大成建設公式サイト
大成建設は、生産プロセスのDX化の一環としてメタバース上で発注者への説明や仕様の決定といった承認までを完結する「建設承認メタバース」を開発。プロジェクトの合意形成に必要な情報を一元管理できるようにし、業務効率化や働き方改革を目指していきます。
建設承認メタバースを活用することで、承認プロセスのデジタル化や議事録の自動作成などが実現可能です。また、情報を明確化させることで早期の建築物竣工にもつながるなど、従来の業務スタイルの変革も期待できます。
これらの事例から分かるように、メタバースは製造業の業務効率化・採用・広報・技術発信など多方面に活用可能なプラットフォームです。
次章では、こうした事例を踏まえ、製造業がメタバースを導入する際のポイントと今後の展望を整理します。
5.まとめ
メタバースは、単なるバーチャル空間ではなく、製造業のDX(デジタルトランスフォーメーション)を加速させる新たなビジネスインフラとして注目されています。
物理的な距離や時間の制約を超え、リアルでは不可能だった情報共有や顧客体験を実現できる点が最大の魅力です。
営業活動では顧客との接点を拡大し、採用ではリアルな職場体験を提供、広報や展示会ではブランドの世界観を表現するなど、メタバースの活用は製造業のあらゆる領域に広がりつつあります。
さらに、インダストリアルメタバースのように生産・設計・運用を一貫管理できる仕組みも登場し、産業構造そのものを変革する可能性を秘めています。
今後、メタバースを導入する企業は、単に“話題性”を追うのではなく、
「自社の課題をどのように解決できるか」
「社内外にどのような新しい体験価値を生み出せるか」
という観点で戦略的に活用することが求められます。
リプロネクストでは、製造業をはじめとする企業向けに、メタバース・VR・ARを活用したプロモーションや教育、採用コンテンツの企画・開発を行っています。
目的に合わせた空間設計から、ストーリー設計、導入支援までワンストップでサポートしています。
「製造業でのメタバース活用を検討している」
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