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メタバース授業で子どもはどう変わったのか|想像を超えた没入感と「話せた」という自信

メタバース授業で子どもはどう変わったのか|想像を超えた没入感と「話せた」という自信

小学校の外国語授業では、教室内でのやり取りが中心となり、実際に英語を使う体験を設計しにくいという課題があります。新潟市立松野尾小学校では、その課題に対し、メタバースを活用した外国語授業を実施しました。

2026年1月29日、小学校6年生の児童12名と、英語での対話をサポートする大学生ボランティア12名、英語指導助手1名が参加し、仮想空間上で英語によるコミュニケーションに取り組みました。リプロネクストは、メタバース空間の運営および技術面のサポートを担当しました。

今回は、メタバースを活用した外国語授業について、松野尾小学校 校長の茂木先生へのインタビュー内容をもとに、子どもたちの変化や教育的な気づきを整理します。

背景・課題

小学校の外国語授業では、教室の中での練習が中心になりやすく、実際に英語を使って教室の友達以外とコミュニケーションを取る機会は多くありません。そのため、「英語を覚える・理解する」ことはできても、本当に「英語を使って伝えられた」という体験を実感しにくいという課題があります。

メタバースを活用することで、海外の人と話す場面や実際のコミュニケーションに近い状況を仮想的に作り出し、子どもたちに「英語を使ってみる」経験を届けることができます。こうした体験を通じて、異言語や異文化、他者への興味や関心を高め、自分からコミュニケーションを図りたいという意欲につなげることが期待されます。

なお、メタバースは読み書きや発音などの基礎指導を置き換えるものではなく、対面授業を補完し、実践の機会を広げるための手段として活用することが前提となります。

本記事では、新潟市立松野尾小学校において実施されたメタバースを活用した外国語授業を題材に、現場での実践を通じて得られた気づきや変化について整理しています。

※以下の内容は、インタビューで伺ったお話をもとに整理しています。


・空間内部風景

・当日授業の様子

▶▶体験空間はこちら

導入のきっかけと目的:地元にメタバースの支援企業があったことが後押しに

― メタバースを活用した英語学習に取り組もうと思ったきっかけは何でしたか?

以前から、メタバースを教育に活用した取り組みの話は耳にしており、効果があるという声も聞いていました。しかし、設備や準備のハードルが高い印象があり、自分から積極的に導入を考えていたわけではありませんでした。

今回、新潟に教育分野でメタバース活用を支援している企業があると知り、伴走しながら進められるのであれば、一度やってみようと判断しました。

実施前の不安:通信環境や設備面への懸念

― 実施前に不安だった点はどこですか?

一番の不安は通信環境や機材など、ハード面でした。
ネットワークが安定するか、機器がスムーズに動くかといった点は、実際にやってみないと分からない部分が多く、不安は大きかったです。

また、内容面では「外国語のコミュニケーションは最終的には対面になるのではないか」「メタバースでどこまで教育的な効果があるのか」という点について、正直なところ懐疑的な気持ちもありました。

想定との違い:設備面の難しさと、想像以上の没入感

― 実際にやってみて、想定と違った点はありましたか?

ハード面については、想定以上に苦労しました。
通信環境や機材の準備など、うまくいかない部分も多く、ここは想定外だったと感じています。

一方で、内容面については、子どもたちの没入感が想像を大きく超えていました。メタバースについて説明を行い、実際に話をする場を設けたところ、子どもたちの興味関心が大きく高まったことが印象的でした。

子どもたちの変化:知らない人と話せた経験と達成感

― 実施後、子どもたちにはどのような変化が見られましたか?

最も大きな変化は、知らない人と英語でコミュニケーションができたという経験です。
大学生と会話をする中で、「思ったより自分は話せた」という達成感を持った子どもが多く見られました。

自分が英語を使ってやり取りできたという感覚が自信につながり、その後の発言の積極性にも表れていたと感じています。

授業設計の違い:メタバースが「手段」ではなく「ゴール」になった気づき

― これまでの英語の授業と比べて、違いを感じた点はありますか?

通常の外国語授業では、「発表する」「誰かと英語で話す」といった場面をゴールとして設定し、そのために語彙や表現を学習します。今回の取り組みでも、当初はメタバースを英会話の練習を行うための“場”として活用する想定でした。

しかし実際には、子どもたちは「英語を練習するためにメタバースを使う」というより、「メタバースで話したい」「次も参加したい」という気持ちを強くもつようになりました。例えば、「次いつメタバースやるの?」と自ら予定を気にしたり、メタバースでの会話を楽しみにして自主的に英語表現を調べる様子が見られました。

つまり、当初は学習の手段として考えていたメタバースが、子どもたちにとっては学習意欲を生み出す目的そのものとして機能していたのです。

教育的な手応え:根拠のない自信が行動を変えた

― 教育的な視点で、特に印象に残っている点は何ですか?

単元の最後で行う*パフォーマンステストの場面で、いわば「根拠のない自信」が生まれていた点です。英語として正確かどうかは別として、「自分は話せた」という感覚をもったことで、積極的に発言する姿勢が見られるようになりました。

この自信が、その後の学びへの姿勢に良い影響を与えていると感じています。

*パフォーマンステストとは、英語の授業で習得したスキルを、ALTとコミュニケーションを図るなど、実際の場面を想定して実践する評価手法

評価の3つの観点から見るメタバースの可能性:思考力・判断力・表現力と主体性への手応え

― メタバース授業を継続すると、どのような力が育つと思いますか?

学習の評価には、大きく三つの観点があります。

一つ目が知識及び技能、二つ目が思考力・判断力・表現力等、三つ目が学びに向かう力・人間性等です。

メタバースの活用において、特に可能性を感じているのは、二つ目と三つ目の部分です。

英語でどう伝えるかを考えながらやり取りを行う中で、子どもたちは自然と考え、判断し、伝える力を使うようになります。

また、「やってみたい」「話してみたい」という気持ちが生まれることで、学習への意欲やモチベーションが高まり、自ら学習に向かう姿勢が育まれていると感じています。

授業当日に感じたこと:先生自身がメタバース空間に入ることの大切さ

― 当日の授業を通して、先生方に特に見てほしい、感じてほしいポイントはありましたか?

今回の授業では、担任の先生はメタバース空間には入らず、教室というリアルの場でサポートを担当していました。そのため、できれば先生方にも実際にメタバース空間の中に入って、子どもたちと同じ視点で体験してほしかったという思いがあります。

メタバースの授業に本格的に取り組む場合、先生が空間の外から子どもたちを見守るだけでは、「本当に大丈夫だろうか」という不安が先に立ってしまうと感じました。それよりも、担任の先生自身がメタバース空間内に入り、あらかじめ用意された「お助けエリア」などに待機しながら、必要に応じてサポートする形のほうが、子どもたちにとっても先生にとっても安心感があると思います。

実際に空間の中に入ってみることで、子どもたちが何に戸惑い、どこで楽しんでいるのかが分かりますし、メタバース授業への理解も大きく変わると感じました。

同じ立場の校長先生へ:まずは一度、実践してみること

― 同じ立場の校長先生へ、一言お願いします。

まずは、やってみたらどうですか、ということです。
効果があるかどうかを事前に考えるよりも、一度実践してみる方が分かりやすいと思います。

一方で、今後継続的にメタバースを活用していくことを考えた場合には、実際に授業を担う職員の心理的な負担にも配慮し、取り組みやすい環境を整えていくことが重要だと感じています。

運営側へのアドバイスと、今回の取り組みを振り返って

― 最後に、運営側へのアドバイスと、今回の取り組みについて一言お願いします。

まず、運営面については、マニュアルはもう少し具体的であると良かったと感じました。

本番に至るまでに「いつ・誰が・何をするのか」を時系列で整理したチェックシートのようなものがあると、現場としては取り組みやすくなります。例えば、学校内で対応すること、外部と連携することを分けて一覧化した表があるだけでも、安心感は大きく違うと思います。

今回の取り組みについて一言で言えば、「子どもが変わる」という点が一番です。
さまざまな要素が重なった結果ではありますが、その変化を整理し、何が一番変わったのかを言語化できること自体が、メタバースの大きなメリットだと感じています。先生方が求めているポイントと重なる部分を示すことができれば、現場にも受け入れられやすくなるのではないでしょうか。

また、これまで経験のない取り組みに対する心理的なハードルを下げるためにも、運営側がノウハウや事例を積極的に発信していくことは重要だと思います。導入する学校側としては、「他校でどのように進めたのか」「どのような工夫があったのか」が見えることで、安心して一歩を踏み出しやすくなります。

取材を終えて

運営側への具体的なアドバイスをいただき、誠にありがとうございます。
弊社としても、今後は教育現場や専門家の方々と積極的に意見交換を重ねながら、より使いやすく、現場に寄り添った形でメタバースを活用できる環境づくりを進めていきたいと考えています。

最後に、茂木先生には、メタバース授業の導入にご協力いただくとともに、インタビューを通じて率直なご意見・ご感想をお聞かせいただき、心より感謝申し上げます。

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