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自治体・企業で進むメタバース活用|プラットフォームを「施策基盤」として選ぶ考え方

自治体・企業で進むメタバース活用|プラットフォームを「施策基盤」として選ぶ考え方

近年、自治体や企業におけるメタバース活用は、イベントや話題づくりを目的とした一時的な施策から、複数の取り組みを横断して活用する「施策基盤」としての使われ方へと広がりつつあります。

一方で、メタバースに関する情報はエンタメ分野を中心とした文脈や、数年前の事例・市場予測をもとに語られることも多く、実際の業務や施策にどう活用されているのかが分かりづらい状況も見られます。現場で求められているのは、メタバースで何ができるかではなく、どの目的にどのプラットフォームが向いているのか、単発で終わらず継続的に活用できる設計になっているかといった判断軸です。

本記事では、メタバースを流行の技術としてではなく、自治体・企業の取り組みを支える施策基盤として捉え直し、活用シーン別に向いているプラットフォームの考え方と、VR動画および静止画VRツアーを中心とした事例を整理します。

1.メタバース市場規模・動向

1-1.課題・前提整理

メタバースは、これまでゲームやエンターテインメント領域を中心に認知が広がってきましたが、近年ではICTサービスやコンテンツ産業全体の一分野として整理されるようになっています。
一方で、比較的新しい市場領域であることから、実態や成長性に関する情報は断片的になりやすく、国内外でどの程度の規模で拡大しているのかを把握しにくい状況が続いていました。

そのため、メタバースを検討する際には、個別事例やトレンド情報だけでなく、公的資料に基づいた市場全体の位置づけを確認することが重要になります。

1-2.公的資料に基づく市場動向の整理

・出典:総務省 令和7年版 情報通信白書

こうした中、総務省が公表している「令和7年版 情報通信白書」では、メタバースをICTサービスおよびコンテンツ・アプリケーション市場の一分野として位置づけ、市場規模の整理が行われています。
同白書によると、世界のメタバース市場は2024年時点で約744億ドル規模とされ、2030年に向けて約5,000億ドル規模まで拡大する可能性が示されています。

内訳としては、メタバース内でのeコマースが最も大きな市場を形成しており、次いでゲーム、ヘルス・フィットネス分野が続くとされています。一方で、教育・研修、ワークプレイス、広告・プロモーションといったビジネス用途においても、メタバースを活用した取り組みが増えつつあります。

これらの分野では、単なる仮想空間の体験にとどまらず、施策や業務を支える基盤としてメタバースを位置づける動きが見られます。

・出典:総務省 令和7年版 情報通信白書

また、日本国内においても、メタバースプラットフォーム、コンテンツ、インフラ、XR機器などを含めた市場全体が、2024年度に約2,750億円規模、2028年度には1兆円規模を超える水準まで拡大すると予測されています。

1-3.市場拡大を支える要因

情報通信白書では、市場拡大の要因として、XRデバイスの進展、AI技術の発展、メタバースに対する認知の広がりなどが挙げられています。特に注目すべき点として、市場を牽引しているのはハードウェアそのものではなく、消費者や利用者向けのメタバースサービスであることが示されています。

これは、専用デバイスの普及に依存する段階から、Webブラウザやスマートフォンなどを通じて利用可能なサービスへと活用の重心が移りつつあることを示唆しています。

1-4.活用フェーズの変化

これらの動向から、メタバースは一部の先進的な取り組みに限られた存在ではなく、今後は施策やサービスを支える基盤として検討される領域へと段階的に移行していくことが想定されます。市場規模の拡大はあくまで背景であり、今後は「どの分野で、どのように活用されているのか」「どのような目的で導入されているのか」といった活用設計そのものが、より重要な論点になっていくと考えられます。

2.ビジネス活用が進む領域

前章では市場全体の整理を行いましたが、本章では実際の業務・施策の現場で、どのような用途に落とし込まれているのかを見ていきます。

メタバースは、かつてはエンターテインメント用途が中心でしたが、市場の拡大と技術進展に伴い、近年ではビジネス領域での活用が段階的に広がりつつあります。特に、EC、教育・人材育成、業務・ワークプレイス、広報・プロモーションといった分野では、従来手法の延長では解決しにくかった課題に対する新たな選択肢として検討されるケースが増えています。

ここでは、現在ビジネス活用が進んでいる代表的な領域について整理します。

2-1. EC・販促領域(体験価値の拡張)

EC分野では、商品情報を「見る・読む」だけでなく、「体験する」形で伝える手段としてメタバースが活用され始めています。仮想空間上に商品や売り場を再現することで、サイズ感や利用シーンを疑似体験できるほか、ブランドの世界観を含めた訴求が可能になります。

情報通信白書でも、メタバース内でのeコマースが市場規模の中で最も大きな割合を占めている点が示されており、今後もECとメタバースの連動は重要な活用領域の一つと考えられます。

2-2. 教育・人材育成領域(理解度・没入感の向上)

教育分野では、学校教育、企業研修、専門教育などを中心に、メタバースを活用した学習環境の構築が進められています。仮想空間上での体験型学習や、遠隔地同士をつないだ共同学習により、座学だけでは伝えにくい内容を直感的に理解させることが可能になります。

特に、実習や見学を伴う教育分野では、物理的制約を補完する手段として活用されるケースが増えており、今後も継続的な検討が進む領域といえます。

2-3. 業務・ワークプレイス領域(コミュニケーション基盤)

企業活動においては、リモートワークや分散型組織の広がりを背景に、オンライン上でのコミュニケーション手段の高度化が求められています。メタバースは、会議やワークショップ、展示・レビューといった業務シーンにおいて、単なるビデオ会議とは異なる「空間を共有する体験」を提供できる点が特徴です。

業務効率化だけでなく、偶発的なコミュニケーションやチームの一体感を生み出す手段として検討されるケースも見られます。

2-4. 広報・ブランディング領域(接触機会の創出)

広報・ブランディング領域では、イベント、展示会、観光PR、採用広報などを中心に、メタバースを活用した情報発信が行われています。仮想空間を通じて、地理的・時間的制約を受けずに情報接触の機会を提供できる点は、従来の施策にはない特徴です。

特に自治体や企業においては、単発のイベントにとどまらず、継続的に活用できる「施策基盤」としてメタバースを位置づける動きも見られます。

2-5. 活用領域拡大の背景

これらのビジネス活用が進んでいる背景には、専用デバイスに依存しない利用環境の広がりや、Webブラウザ・スマートフォン対応の進展があります。また、生成AIやデータ活用と組み合わせることで、単なる空間提供にとどまらない活用設計が可能になってきている点も特徴です。

次章では、こうした活用領域を踏まえながら、メタバースプラットフォームごとに「どのようなシーンに向いているのか」という視点で整理していきます。

3. メタバースプラットフォーム別に見る「向いている活用シーン」

メタバースと一口に言っても、プラットフォームごとに設計思想や得意領域は大きく異なります。

本章では、代表的なメタバースプラットフォームを「どのような活用シーンに向いているか」という観点から整理します。機能の網羅や企業紹介ではなく、施策・業務で選ばれる理由に焦点を当てています。

3-1. イベント・交流特化型プラットフォーム

イベント開催や交流促進を主目的として設計されたプラットフォームは、参加ハードルの低さや同時接続性を重視している点が特徴です。オンラインイベント、自治体施策、説明会、交流企画など、「多くの人に一度に体験してもらう」用途に適しています。

例として、Roomiqブラウザベースで参加でき、施策やイベント用途で導入されるケースが多く、clusterは演出性の高い大規模イベントに向いています。VRChatコミュニティ形成や継続的な交流を前提とした活用に適しています。

Roomiq(ルーミック)法人向けサイト|ブラウザ型メタバースプラットフォーム
・Roomiq 法人サイト
・出典:cluster
・出典:VRCHAT

3-2. 業務・施策基盤型プラットフォーム

業務利用を前提に設計されたプラットフォームは、会議や共同作業など、日常業務との親和性を重視している点が特徴です。既存の業務ツールと連携しやすく、実験的ではなく「業務の延長線」として導入されるケースが多く見られます。

業務用途では、Microsoft Meshのように既存業務ツールと連携する設計が代表的な例として挙げられます。Microsoft Meshは、Microsoft Teamsと連携し、アバターを用いた会議や共同作業を行える仕事向けのメタバースとして位置づけられており、リモートワークや分散チームでの活用が想定されています。

・出典:Microsoft_Mesh

3-3. クリエイティブ・空間制作特化型プラットフォーム

空間表現や演出、コンテンツ制作を重視するプラットフォームは、自由度の高い設計や表現力を強みとしています。都市連動型のAR体験や展示、実験的な表現など、「空間そのものを作り込む」用途に向いています。

STYLYはAR/VRコンテンツ制作を軸とし、都市空間と連動した体験設計が可能な点が特徴です。一方で、Unreal Engine系の環境は、高精細な表現や独自開発を前提としたプロジェクトで選ばれる傾向があります。

・参考:STYLY
・出典:Unreal Engine

3-4. NFT・経済圏連動型プラットフォーム

ブロックチェーン技術と連動したプラットフォームは、デジタル資産の所有や経済活動を前提とした設計が特徴です。ユーザー参加型の経済圏構築や、NFTを活用した施策を行いたい場合に選択されることがあります。

The SandboxやDecentralandは、仮想空間内での土地所有やコンテンツ取引を前提とした設計となっており、コミュニティや経済圏づくりを重視するプロジェクトに向いています。

出典:The Sandbox
・出典:Decentraland

3-5.プラットフォーム型ではなく、個別構築されるメタバース活用

これまで紹介してきたメタバース活用の多くは、既存のプラットフォームを前提とした取り組みでした。一方で、行政手続きや業務支援、常設の情報発信拠点といった実務用途においては、特定のプラットフォームを利用せず、個別に設計・構築されるケースも増えています。

このような取り組みでは、Unityなどの3DエンジンやWeb技術を用いて、自治体や企業のドメイン配下にオリジナルの仮想空間を構築し、既存のWebサイトやLINE、業務システムと連携させる設計が取られます。UIや導線、データ管理を組織の運用方針に合わせて設計できる点が特徴です。

一方で、オリジナル設計となるため、初期開発費や月額運用費が一定以上かかるケースが多く、短期間の実証事業やテスト導入にはハードルが高いという側面もあります。そのため、実務用途においても、最初から個別構築を行うのではなく、プラットフォーム型で検証を行った上で段階的に移行するケースも見られます。

このように、産業・行政分野におけるメタバース活用では、「どのプラットフォームを選ぶか」ではなく、「どのフェーズで、どの構築方法を選ぶか」という視点で整理される傾向が強まっています。

4.まとめ

メタバースは、かつてのように単一の用途や体験を提供するものではなく、複数の施策や業務を横断して活用される基盤として検討される段階に入っています。イベントや交流を目的としたプラットフォーム、ブラウザで手軽に使える汎用型、教育・体験設計に向いたもの、さらにはプラットフォームを使わず個別に構築されるケースまで、活用の形は多様化しています。

重要なのは、特定のサービス名や機能から選ぶことではなく、「どのフェーズで、どの用途に、どの形が適しているか」を整理することです。実証やテスト段階では既存プラットフォームを活用し、本格運用や業務連携が必要になった段階で個別構築へ移行するなど、段階的に選択肢を切り替える考え方も現実的になっています。

メタバース活用は、単発の施策ではなく、継続的に積み上げていく取り組みへと変化しています。自組織の目的や運用体制を前提に、どの形が適しているのかを見極めることが、これからのメタバース活用における重要な視点といえるでしょう。

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